ウォーターフォール開発とは?メリット・デメリット、向いているケースを紹介

システムやアプリ開発には色々な手法があります。

その中でも「ウォーターフォール開発」と「アジャイル開発」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

2つはそれぞれメリットやデメリットがあり、ケースによって適している手法を選ぶことが求められます。

ここではウォーターフォール開発のメリットやデメリットについて詳しく解説していくとともに、アジャイル開発との違いについてもご説明します。

ウォーターフォール開発とは?

ウォーターフォール開発は、日本語でいう「滝」にあたり、水が下へと落ちていく様を模しています。

つまり、アプリやシステムの開発を上流工程から下流工程の流れに沿って行っていくのが最大の特徴です。

【意味・定義】ウォーターフォール開発とは?

ウォーターフォール開発とは、システム開発における工程を上流工程から下流工程に順々に移行していく開発手法をいう。

上流工程は要件定義をはじめとし、定義をもとに設計・開発・テストと順番に進んでいきます。

1つの工程が終わってから次の工程と1つずつ工程を完了させていくことがほかの手法と最も異なる点でしょう。

ウォーターフォール開発での6つの工程

ウォーターフォール開発での6つの工程
  • 工程1.要件定義
  • 工程2.基本設計
  • 工程3.詳細設計
  • 工程4.コーディング
  • 工程5.ソフトウェアテスト
  • 工程6.運用・保守

工程1.要件定義

要件定義は、アプリやシステム開発において最初の工程になるのでとても重要です。

この工程では、開発するシステムやソフトウェアに関するニーズや要求を明確にし、理解を深めるための作業が行われます。

本来、要件定義は発注者側でおこなうものですが、実際には、受注者・開発者が主体となるか、または受注者による相当程度のサポートがあることが多いです。

要件定義は、「何を作るのか」を決定する段階になるので、受注者・開発者としては、発注者のニーズをしっかりと拾い上げられるかがポイントになります。

工程2.基本設計(外部設計)

基本設計(外部設計)では要件定義書やシステム仕様書に書かれている内容に従って、システムやアプリの全体構造やインターフェースの設計を行います。

【意味・定義】インターフェースとは?

インターフェースとは、「境界面」や「接点」のことであって、2つの異なるシステムなどがお互いに通信や操作を行うために必要な方法やソフトウェアをいう。

インターフェースとは?システムやアプリ開発で使われる場合の意味をわかりやすく解説

また、外部設計では外部システムとのインターフェースやデータの入出力方法なども決定されます。

そのほかには、画面のレイアウトや操作方法といったシステム自体の使いやすさやユーザーが満足してもらえる部分の仕様を決定することも含まれています。

この段階で、上層部から意見や要望が出ることもあるため期限が延びがちになる点に注意しましょう。

要件定義同様、基本設計(外部設計)も本来は発注者がおこなうものですが、こちらも受注者・開発者が主体となるか、または受注者による相当程度のサポートがあることが多いです。

工程3.詳細設計(内部設計)

詳細設計(内部設計)では、要件定義に加えて外部設計で決定されたものをもとに開発を進めていく段階です。

そのためこの段階が、顧客側からは最も進捗や成果が見えにくいといわれています。

詳細設計ではアプリやシステムの機能がどのように実現できるかを詳細に設計していきます。

たとえばデータの保存方法やログイン方法といったものが挙げられるでしょう。

顧客側も見えないからとそのままにするのではなく、システムがきちんと作動するか程度の確認をすることをおすすめします。

工程4.コーディング

コーディングは、アプリやシステムの実際に使われるプログラムを作る工程です。

詳細設計(内部設計)で作られたものを使って、コードを書いていきます。

コーディングでは、プログラマーが、プログラミング言語を使ってアプリの各機能や動作を実現します。

なお、内部設計にコーディングを含める考え方もあります。

工程5.ソフトウェアテスト

ソフトウェアテストでは、アプリやソフトウェアの品質や動作を確認するための検証作業が行われます。

具体的なこととしては、テストケースを作成してアプリの各機能を試してみたり、データの入力や操作を行って予期しない振る舞いやエラーがないか確認したりします。

また、セキュリティやパフォーマンスの面でもテストを行います。テスト結果は報告され、不具合が見つかれば修正や改善が行われます。

ソフトウェアテストはアプリの信頼性や品質を確保するために欠かせない作業です。

工程6.運用・保守

運用とは、ソフトウェアやシステムを実際に使用し続けるための活動です。

ここではアプリやシステムの正常な動作や安定性を維持するための監視や管理が行われます。

また、ユーザーサポートや問題解決も担当します。

そして保守は、運用中に発生する不具合やバグの修正・機能の追加や改善などのアップデート作業を指します。

運用と保守は、ソフトウェアの継続的な品質や利便性を確保するために重要な活動です。

ウォーターフォール開発のメリット4つ

ウォーターフォール開発のメリット4つ
  • 1.スケジュール管理しやすい
  • 2.進捗状況の管理・把握をしやすい
  • 3.予算・人員手配がスムーズ
  • 4.つくるシステム・アプリを明確にしやすい

メリット1.スケジュール管理しやすい

ウォーターフォール開発のメリットの一つは、スケジュール管理がしやすいことです。

開発プロジェクトは、段階的に進行し、各工程が上流から下流へと直線的に進んでいくので、捗状況を把握しやすくなります

各工程の完了後に次の工程に進むため、予定通りに開発進めることができる点が大きいでしょう。

また、各工程での成果物や目標が明確であるため、タスクの優先順位を明確化し、計画を立てやすくなります。

これにより、スケジュールの遅延や予算超過のリスクを抑えることができます。

メリット2.進捗状況の管理・把握をしやすい

ウォーターフォール開発では、進捗状況の管理・把握がしやすいです。

開発プロジェクトは段階的に進み、各工程ごとに順々に完了するため、進捗を把握するのが難しくはありません。

そして各工程の完了時点で成果物が明確になるため、それを基準に進捗を評価できます。

つまり各工程ごとに目標やマイルストーンが設定されており、これらを達成することで進捗が確認できるということです。

さらに、ウォーターフォール開発では各工程の完了を待ってから次の工程に進むため、次のステップに進む前に進捗を確認できるのもメリットでしょう。

その際には進捗管理ツールや週次報告などを活用することで、全体の進捗状況を可視化し、プロジェクトの進行状況を把握することもできます。

これにより、遅延や予算超過などのリスクを早期に把握し、適切な対策を講じることができます。

メリット3.予算・人員手配がスムーズ

ウォーターフォール開発では、各工程が段階的に進むため、必要な予算や人員の範囲をあらかじめ把握しやすくなります。

各工程の開始時点で必要な予算と人員の要件が明確になっているため、それに基づいて予算の計画や人員の配置もしやすいです。

また、各工程ごとに明確な成果物や目標が設定されているので、それぞれに対応する予算と人員を割り当てるといった柔軟な対応もできます。

さらに、各工程の完了を待ってから次の工程に進むため、予算と人員の手配も段階的に行われるため、適切な範囲で管理できます。

予算と人員のスムーズな手配により、プロジェクトの進行において予算が過不足になることや、人員不足のリスクを低減することにもつながります。

メリット4.つくるシステム・アプリを明確にしやすい

ウォーターフォール開発では、各工程ごとに目標や成果物が明確に定義されるので、開発チームと顧客側(クライアント)の間で共通の理解が得られます。

要件定義や設計の段階で具体的な機能や仕様が定められ、それに基づいて開発が進められます。

そこでは各工程の完了時には成果物がレビューされ、次のステップに進む前に確認が行われます。

これにより、開発の目標や方向性が明確になり、クライアントとのコミュニケーションもスムーズになります。

つくるシステム・アプリが明確になることで、開発プロセス全体の進行状況や成果物の品質を把握しやすくなります。

ウォーターフォール開発のデメリット2つ

デメリット1.工数が増えるリスクがある

ウォーターフォール開発のデメリットの1つ目は、工数が増えるリスクが挙げられます。

すでに触れたとおり、ウォーターフォール開発は、開発の各工程が一方向に進んでいきます。

これは、手戻り・修正・変更などを前提としていないためであり、これらを前提としているアジャイル開発とは大きく異なる特徴です。

このため、後の工程で前の工程の変更や修正が必要になったときに、修正に追加の時間や労力がかかる可能性があります。

デメリット2.ユーザーの意見を入れにくい

工数が増えるリスクと似ているところでは、顧客側(ユーザー側)の意見を入れにくいという側面があります。

これは開発工程が直線的に進んでいくため、途中で要望を柔軟に反映させることが難しいからです。

そのため、要件定義や設計の段階で顧客側やユーザーの声をしかりと取り入れたものを作り上げる必要があります。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い

ウォータフォール開発とアジャイル開発の4つの違い
  • 1.開発スピード
  • 2.要求事項
  • 3.柔軟性
  • 4.予算

違い1.開発スピード

ウォーターフォール開発では、開発スピードは比較的遅く、各工程が順番に進行するために時間がかかります。

一方、アジャイル開発では、短期間で小さな成果物を頻繁にリリースしながら進めるため、開発スピードが速くできるという特徴があります。

違い2.要求事項の変更

ウォーターフォール開発では、要求事項は開発の初期段階で詳細に定義され、後の工程での変更が難しい傾向があります。

一方、アジャイル開発では、要求事項は柔軟に変化し、開発の進行に合わせて継続的に詳細化されます。

アジャイルでは、ユーザーのフィードバックや優先順位の見直しを通じて要求事項を進化させるため、変化に迅速に対応できます。

違い3.柔軟性

ウォーターフォール開発では、開発工程の進み方が直線的なので、アジャイルと比較すると柔軟性が低く、変更や修正が難しい傾向があります。

一方アジャイル開発では柔軟性が高く、短期間の反復を通じて変更や改善を取り入れることができます。

アジャイルでは、ユーザーのフィードバックや新たな要求に対して素早く対応し、柔軟に変化する環境に適応できます。

違い4.予算

ウォーターフォール開発では、予算の見積もりやリソースの配分が開発の初期段階で行われるため、予算管理は比較的予測しやすいです。

一方、アジャイル開発では、短期間の反復や変更への柔軟な対応が求められるため、予算の見積もりや予算配分はより複雑になります。

そのためアジャイルでは、進行しながら要求の優先順位を見直し、予算の調整を行うことがあります。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い
ウォータフォール開発 アジャイル開発
開発スピード 比較的遅い 比較的早い
要求事項の変更 難しい 簡単(変更が前提)
柔軟性 低い 高い
予算 比較的予測しやすい 複雑

ウォーターフォール開発が向いている・向いていないケースとは?

ウォーターフォール開発が向いているケース

ウォーターフォール開発は、以下のようなケースに向いています。

向いているケース
  • 要件が明確に定まっており、変更が予想されない場合。
  • プロジェクトのスコープや目標が固定されており、変更が少ない場合。
  • 開発プロセスやスケジュールが予め決まっており、進捗管理が重要な場合。
  • クライアントとの契約や法的な要件に基づいて、明確な成果物が必要な場合。
  • 大規模なプロジェクトであり、リソースや予算の管理が厳密に求められる場合。

たとえば金融システムや医療情報システム、オンラインショッピングシステムなど開発期間が長く、高い品質が求められるようなソフトウェアが適しています。

ウォーターフォール開発が向いていないケース

ウォーターフォール開発は、以下のようなケースの場合は向いていないでしょう。

向いていないケース
  • 要求の変化が予測できない場合
  • ユーザーのフィードバックや参加が重要な場合
  • 技術や市場の変化が激しい場合

たとえばスマホアプリやデータ分析ツールといった、ユーザーの要望に応じて迅速な対応が求められるソフトウェアには向いていません。

変化の激しいソフトウェアやユーザーの要求が頻繁に変わる場合には、アジャイル開発のほうが適していることもあります。

ウォーターフォール開発に関するよくある質問

ウォーターフォール開発とはどのような開発手法ですか?
ウォーターフォール開発とは、システム開発における工程を水がオチてくるように上流工程から下流工程に順々に移行していく開発手法のことです。
ウォーターフォール開発には、どのような工程がありますか?
ウォーターフォール開発には、次の工程があります。

  • 工程1.要件定義
  • 工程2.基本設計
  • 工程3.詳細設計
  • 工程4.コーディング
  • 工程5.ソフトウェアテスト
  • 工程6.運用・保守