本記事では、棚卸し業務(実地棚卸)におけるAppSheetの活用法について解説しています。
棚卸し業務は、企業ごとの商品の種類や在庫の管理方法、業務プロセスに合わせて、実施する時期や手法が異なります。
一般的な棚卸し業務システム・アプリは数多く存在しますが、これらのシステム・アプリ(ToBe)は、必ずしも企業の実態(AsIs)と適合しているとは限りません。
具体的には、適切なデータの取り扱いや業務フローとの適合に課題が生じる可能性があります。
また、既存の業務プロセスやシステムとの統合が困難であったり、特定の業務ニーズを満たす機能が欠けていたりします。
これらの問題解決の手段として、AppSheetによる棚卸し業務システム・アプリの構築がおすすめです。
柔軟なカスタマイズ性があるAppSheetであれば、企業ごとの業務プロセスの課題に対応した棚卸しシステム・アプリを構築できます。
本記事では、棚卸し業務の課題やニーズ、AppSheetを使った在庫管理システム・アプリの構築についてご紹介します。
棚卸し業務(実地棚卸)の課題とニーズ
棚卸し業務(実地棚卸)は、在庫管理の一環として、店舗や倉庫にある商品や資産の実数を把握し、帳簿上の棚卸し(帳簿棚卸)との差異について確認する作業です。
正確な棚卸し業務は、商品の供給や需要の予測、資産管理、会計処理のために企業にとって不可欠です。
一般的な棚卸し業務には、以下の課題があります。
棚卸し業務の課題
- 商品や在庫の数え上げに時間とリソースがかかる
- ヒューマンエラーの発生リスクが高い
- リアルタイムな情報の不足
こうした課題を解消する方法として、棚卸し業務のシステムやアプリの導入が挙げられます。
システム・アプリ導入による効率化のニーズ
- 自動化・デジタル化
- バーコード・QRコードの活用
- リアルタイムな情報の提供
- 機会学習や予測分析の活用
こうしたニーズに応えるものとして、低コストでカスタマイズして使用できるノーコード開発ツール「AppSheet」を使ったシステム・アプリの構築が特に注目を集めています。
AppSheetを使うことで、企業ごとの棚卸し業務に合わせたシステム化・アプリ化が、無料・低コストで行えます。
AppSheetとは?
AppSheet=Googleが提供するノーコードツール
まずはAppSheetの基本をみていきましょう。
AppSheetは、Googleが提供するノーコードでアプリ構築ができる開発ツールのひとつで、低コストで、柔軟かつ比較的高機能なアプリ構築ができる点に特徴があります。
【意味・定義】AppSheetとは?
AppSheetとは、Googleが提供するノーコードプラットフォームの一種で、ユーザーがプログラミングの知識なしにアプリケーションを作成できるツールをいう。
AppSheetは国内外問わず多くの企業で使われているノーコードツールの一つで、プログラミングの知識がなくても簡単にカスタムアプリを作成できます。
ノーコード開発・ノーコードツールとは?
ノーコード開発とは、ソースコードを書かずに、つまりプログラミングせずに、アプリケーションやWebサービスの開発をする開発手法のことです。
【意味・定義】ノーコード開発とは?
ノーコード開発とは、プログラミングせず、ノーコードツールの使用により、ビジュアルなツールやドラッグ&ドロップ等の直感的な作業によるアプリケーションやWebサービスの開発が可能な開発手法をいう。
こうしたノーコード開発のために使われるツールのことを、「ノーコードツール」や「ノーコード開発ツール」といいます。
【意味・定義】ノーコードツールとは?
ノーコードツールとは、プログラミングの知識がなくても直感的な画面操作やドラッグ&ドロップでカスタムアプリを作成できるツールをいう。
ノーコードツールは、従来のプログラミングに頼らずにビジネスユーザーや非技術者でも手軽にアプリ開発ができるようにするためのプラットフォームです。
AppSheetのメリット
AppSheetの導入には様々なメリットが存在します。
AppSheetのメリット
- 導入コストの低さ
- 柔軟性とカスタマイズ性
- リアルタイムなデータ更新
- 開発時間の短さ
無料プランの提供もあるので、まずは無料でテストアプリを作ってみるのがおすすめです。
なお、AppSheetの料金プランにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリット
次に、AppSheetを活用して棚卸し業務を自動化するメリットをみていきましょう。
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリット
- メリット1.効率化と時間の節約
- メリット2.データ精度と品質の向上
- メリット3.リアルタイムな在庫トラッキング
- メリット4.柔軟性とカスタマイズ性
- メリット5.在庫管理アプリ・システムとの連携
メリット1. 効率化と時間の節約
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリットの1つ目は、効率化と時間の節約です。
AppSheetには、バーコードやQRコードの読取り機能があります。
こうしたバーコード・QRコードの読取り機能を活用することで、在庫の読み取りやデータ入力の自動化が可能になります。
これにより、棚卸し業務の作業時間を大幅に短縮できます。
メリット2. データ精度と品質の向上
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリットの2つ目は、データ精度と品質の向上です。
AppSheetは、バーコードやQRコードによって取得したデータは、自動でデータベースに取得され、集計も自動でおこなえます。
これにより、データ取得や集計によるヒューマンエラーやミスが減少し、在庫データの正確性が向上します。
結果的に、在庫の過不足などの問題回避が可能となります。
メリット3. リアルタイムな在庫トラッキング
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリットの3つ目は、リアルタイムな在庫トラッキングです。
AppSheetは、オンラインの状態では、常にリアルタイムでデータベースと同期されます。
このため、AppSheetは、棚卸しの際のデータをを含め、常に在庫情報をリアルタイムに可視化できます。
これにより、最新の在庫状況や棚卸しの進捗状況をいつでも把握できるようになります。
メリット4. 柔軟性とカスタマイズ性
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリットの4つ目は、柔軟性とカスタマイズ性です。
AppSheetは、企業や組織のニーズに合わせてシステム・アプリを柔軟にカスタマイズできます。
このため、様々な業界や業務に対応した最適な棚卸しツールの構築が可能です。
また、取得したデータは汎用性が高いcsvファイルで出力できますので、csvファイルをインポートできる在庫管理アプリ・システム等との連携も可能です。
このため、既存の業務フローに必要な機能だけを揃えたシステム・アプリを作成できます。
メリット5.在庫管理アプリ・システムとの連携
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化のメリットの5つ目は、在庫管理アプリ・システムとの連携です。
すでに述べたとおり、AppSheetのデータベースは、既存の在庫管理システム・アプリの仕様によっては、csv連携ができます。同様に、API連携ができる場合もあります。
また、そもそもAppSheetそのものにより、在庫管理システム・アプリの構築もできます。
このAppSheetの在庫管理システム・アプリもまた、会計システムとcsv連携・API連携をすることで、在庫管理と会計処理を連動させることができます。
この他、AppSheetの在庫管理システム・アプリにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。
AppSheetで実現可能な機能
AppSheetを使うと、棚卸し業務に役立つ様々な機能を簡単に構築できます。
AppSheetで実現が可能な機能
- 機能1. 在庫数の登録・更新
- 機能2. 在庫アイテムの一覧表示
- 機能3. データの同期
- 機能4. レポート生成
具体例な機能例を以下で紹介します。
機能1. 在庫数の登録・更新
AppSheetで実現可能な機能の1つ目は、在庫数の登録と更新です。
AppSheetには、バーコードやQRコードの生成・作成・読取り機能があります。
特に、バーコードやQRコードの読取りには、専用のデバイスが不要であり、スマホやタブレットのカメラ機能で読取りができます。
こうしたバーコードやQRコードの読取り機能を実装することで、在庫アイテムの識別が容易になり、在庫更新作業も効率的に行えます。
なお、バーコード・QRコードの読取り機能については、詳しくは、次のページをご覧ください。
機能2. 在庫アイテムの一覧表示
AppSheetで実現可能な機能の2つ目は、在庫アイテムの一覧表示です。
AppSheetは、「データビュー」という機能により、取得したデータの表示をカスタマイズできます。
このため、在庫アイテムの一覧を表示する画面を簡単に構築できます。
具体的には、アイテム名、在庫数、その他の関連情報など、必要な情報に簡単にアクセスできるようになります。
機能3. データの同期
AppSheetで実現可能な機能の3つ目は、データの同期です。
AppSheetは、原則としてオンラインでの使用が前提となっていますが、オフラインモードにより、オフラインでも使用できます。
【意味・定義】オフラインモードとは?
オフラインモードとは、インターネット接続がない状態でもアプリやサービスを利用できる機能をいう。
オフラインで使用した場合、オンラインに復帰した際に、取得したデータとデータベースが同期されます。
このため、山間部や海上など、通信が不安定な環境やフィールドでも棚卸し作業を継続できます。
機能4. レポート生成
AppSheetで実現可能な機能の4つ目は、レポート生成です。
AppSheetには、取得したデータについて、レポートを生成する機能があります。
棚卸しの結果をレポートとして出力することで、管理者や関係者に情報をまとめて共有できます。
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化の注意点
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化には注意点もあります。
ポAppSheetを活用した棚卸し業務の自動化の注意点
- 注意点1.在庫管理と一体で自動化する
- 注意点2. データの信頼性と正確性
- 注意点3. トレーニングとユーザー教育
- 注意点4. セキュリティの見直し
詳しくみていきましょう。
注意点1. 在庫管理と一体で自動化する
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化の注意点の1つ目は、在庫管理と一体で自動化することです。
棚卸し業務を単独で自動化する場合、在庫管理システムとの連携やデータの整合性の確保など、他の業務との調整が難しくなります。
このため、棚卸し業務だけではなく、入庫・出庫も含めた在庫管理全体を自動化することが重要です。
この点について、すでに述べたとおり、AppSheetは、csv連携やAPI連携により既存の在庫管理システムとの連動や、在庫管理システム・アプリそのものの構築も可能です。
注意点2. データの信頼性と正確性
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化の注意点の2つ目は、データの信頼性と正確性です。
AppSheetは高性能なノーコードツールですが、当然ながら、ヒューマンエラーを完全に無くすことはできません。
特に、元々のデータ入力が誤っていたり、バーコード・QRコードが不鮮明な場合は読み取りエラーなどが発生する可能性があります。
このため、人間によるデータ入力・取得やバーコード・QRコードの生成・作成・出力などにおいて、正確な品質管理プロセスの実施が重要となります。
注意点3. トレーニングとユーザー教育
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化の注意点の3つ目は、トレーニングとユーザー教育です。
ユーザーが操作の方法や手順を正しく理解せずにシステム・アプリを使ってしまうと、誤操作や不正確なデータ入力が発生する可能性が高いです。
特に、棚卸し業務は、入庫の際のバーコード・QRコードの生成・作成・出力や、出庫・棚卸しの際のバーコード・QRコードの読取りにおいて、ヒューマンエラーが発生する可能性があります。
こうしたヒューマンエラーに対応するために、ヘルプセンターやマニュアルを用意し、システム・アプリの使い方講座などのトレーニングと教育を効果的に行うことが重要です。
注意点4. セキュリティの見直し
AppSheetを活用した棚卸し業務の自動化の注意点の4つ目は、セキュリティの見直しを行うことです。
棚卸し業務では、機密性の高い情報を扱う場合があるため、データのセキュリティとプライバシーを確保するための適切なセキュリティ対策が重要です。
特に、AppSheetは、オンラインで使用することが前提となるため、不正アクセス等やサイバー攻撃のリスクを考慮しなくてはなりません。
この点について、AppSheet自体はGoogleが提供するツールであるため、高いセキュリティが確保されています。
しかしながら、Googleが関与しない部分でセキュリティが確保されていないと、なりすましや乗っ取りなどのセキュリティ上のリスクが発生します。
セキュリティ確保の具体例
- 権限の区分・分散
- アクセス制御
- データの暗号化
- セキュアな通信
まとめ
AppSheetを使った低コストでのシステム・アプリの構築は、効率的な棚卸し業務プロセスを実現します。
特に、在庫管理システム・アプリや会計ソフトとの連動により、低コストで会計処理の効率化を図ることができます。
AppSheetで企業の独自の業務ニーズに適用したシステム・アプリを構築して、棚卸し業務を効率化させましょう。
当社では、こうしたAppSheetを含めたノーコードツールを活用した業務アプリ・業務システムの開発会社の選定をサポートしております。
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