この記事では、ノーコード開発ツールであるGlide(グライド)について解説します。
Glideは、スマートフォンやタブレット向けのウェブアプリを開発できるツールです。
Glideの特徴は、コーディング・プログラムをすることなく、ExcelやGoogleスプレッドシートを使用して開発ができる、という点にあります。
このため、Glideは、特にスマホ向けの簡単なウェブアプリの開発に向いています。
本記事では、こうしたノーコードツール「Glide(グライド)」の概要や、Glideを活用するメリット・デメリット、また料金プランなどについて詳しく解説します。
Glide(グライド)とは?
Glideは主にスマホ向けウェブアプリのノーコード開発ツール
Glideは、スマートフォンやタブレットに特化したウェブアプリをノーコードで開発するためのツールです。
【意味・定義】Glide(グライド)とは?
Glide(グライド)とは、ノーコードツールの一種で、プログラミングのスキルがなくてもスプレッドシートからデータを利用してウェブアプリを構築できるプラットフォームをいう。
【意味・定義】ウェブアプリとは?
ウェブアプリとは、ウェブ技術(HTML、CSS、JavaScriptなど)を使用して開発され、ユーザーがウェブブラウザを通じて様々なプラットフォームで利用可能なアプリケーションをいう。
Glideでアプリを開発する場合、コーディングやプログラミングは必要ではなく、データを視覚的に操作しながらアプリを構築していきます。
【意味・定義】ノーコード開発とは?
ノーコード開発とは、プログラミングせず、ノーコードツールの使用により、ビジュアルなツールやドラッグ&ドロップ等の直感的な作業によるアプリケーションやWebサービスの開発が可能な開発手法をいう。
GlideはPWAに対応可能
Glideは、あくまでウェブアプリの開発ツールであるため、ネイティブアプリの開発はできません。
【意味・定義】ネイティブアプリとは?
ネイティブアプリとは、PCやスマートフォンなどのデバイスにインストールして利用される、特定のプラットフォームに最適化されたアプリケーションをいう。
他方で、Glideは、PWA(Progressive Web Apps)に対応しています。
【意味・定義】PWA(Progressive Web Apps)とは?
PWA(Progressive Web Apps)とは、ネイティブアプリのような機能を提供するウェブアプリをいう。
このため、Glideでアプリを開発した場合、ネイティブアプリのような機能をウェブアプリとして実装することができます。
参照:Glideの公式サイト
Glideを活用するメリット
Glideを活用するメリット
- メリット1. ExcelやGoogleスプレッドシートからアプリを開発可能
- メリット2. テンプレートが豊富
- メリット3. 拡張機能や外部サービス連携の選択肢が豊富
- メリット4. 最先端のAIが使える
- メリット5. 無料で始められる
以下では、Glideを活用するメリットについて詳しく解説します。
メリット1. ExcelやGoogleスプレッドシートからアプリを開発可能
Glideを活用するメリットの1つ目は、ExcelやGoogleスプレッドシートからアプリを開発できる点です。
Glideを利用することで、特別なデータベースの知識がなくても、ExcelやGoogleスプレッドシートなどに保存されたデータを取り込むことだけでアプリが作れます。
Glideで使えるデータベースの具体例
- Google Sheets
- Excel
- Airtable
- BigQuery
- MicrosoftSQLServer
- MYSQL
- PostgreSQL
- Google Cloud SQL
メリット2. テンプレートが豊富
Glideを活用するメリットの2つ目は、テンプレートが豊富な点です。
Glideでは、多くのテンプレートが用意されているので、作りたいアプリに適したテンプレートを使ってアプリを構築できます。
選択したテンプレートを自由にカスタマイズして使うことができます。
メリット3. 拡張機能や外部サービス連携の選択肢が豊富
Glideを活用するメリットの3つ目は、拡張機能や外部サービス連携の選択肢が豊富な点です。
Glideを利用したアプリ開発では、拡張機能や外部サービスとの連携ができます。
この連携により、実装できるアプリの機能の幅が広がります。
連携が可能な拡張機能・外部サービスの具体例
拡張機能
- バーコードの自動生成
- Javascriptの実行
- 文字列のバリデーション
- Youtubeのサムネイル表示
外部サービス
- GAS(Google Apps Script)
- Zapier(アプリ連携・自動化)
- Stripe(オンライン決済)
- Twilio(コミュニケーションプラットフォーム)
- Zendesk(CRM)
- DocuSign(電子契約)
また、API連携も可能なので、拡張性が高いのもポイントです。
参照:拡張機能一覧(Glide公式サイト) / 外部連携先一覧(Glide公式サイト)
メリット4. 最先端のAIが使える
Glideを活用するメリットの4つ目は、最先端のAIが使える点です。
Glideでは、最先端のAI(人工知能)を使ったデータの自動変換サービス「Glide AI」が利用できます。
Glide AIが提供する機能とできることの具体例 |
||
---|---|---|
音声→テキスト | レコーディングの文字起こし | |
書類→テキスト | PDF, DOCX, XLSX, HTMLなどの形式の書類の読み込み&文字起こし | |
テキストの自動生成 | 入力値や保存されているデータをもとにテキストを自動生成(例:顧客メールや製品情報など) | |
画像→テキスト | 画像に含まれるテキストの抽出 | |
テキスト→ブール値 | テキストからブール値判定(真または偽) | |
テキスト→選択 | テキストを分析して、用意したオプションの中から適しているものを選択 | |
テキスト→日付 | テキストを日付形式に変換 | |
テキスト→数値 | テキストを数値に変換 |
アプリにAIを組み込むことで、手作業が必要だった処理が自動で行えるようになります。
【意味・定義】AI(人工知能)とは?
AI(人工知能)とは、機械が学習・知識を獲得し、問題を解決するためのアルゴリズムやプログラムを使用して、人間の知的な能力を模倣する技術をいう。
メリット5. 無料で始められる
Glideを活用するメリットの5つ目は、無料で始められる点です。
Glideが提供するFreeプランでは、一部使える機能の制限などはありますが、基本的な機能は無料で使えます。
アプリの公開をしなければ、数の制限なく作ることができるので、まずはテスト用にいくつか作ってみるのが有効です。
無料プランを含めた料金プランに関しては、本記事の後半で詳しく解説しています。
Glideを活用する際の注意点
Glideを活用する際の注意点
- 注意点1. 有料のテンプレートもある
- 注意点2. デザインや機能の実装に制限がある
- 注意点3. 日本語に対応していない
- 注意点4. SEOやアプリストアでの集客が難しい
以下では、Glideを活用する際の注意点をご紹介します。
注意点1. 有料のテンプレートもある
Glideを活用する際の注意点の1つ目は、有料のテンプレートもある点です。
Glideでは便利なテンプレートが多く用意されていますが、中には有料なものもあるので注意が必要です。
高度な機能が実装されている有料テンプレートは、場合によっては有効な選択肢かもしれません。
開発したいアプリの要件に合わせてテンプレートを探すことが重要です。
注意点2. デザインや機能の実装に制限がある
Glideを活用する際の注意点の2つ目は、デザインや機能の実装に制限がある点です。
Glideは、機能やデザインのカスタマイズの自由度は、比較的低いです。
このため、独自の機能や特殊な画面レイアウトに対応することが難しい場合があります。
社内向けのアプリであれば問題はないのですが、社外向け、特に一般消費者向け(BtoC)のアプリには向いていない可能性があります。
ただし、利用価値やUX(ユーザーエクスペリエンス)に焦点を当てることで、他のアプリとの差別化が可能です。
【意味・定義】UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが商品・製品・サービス・アプリケーションを通じて得られる印象・体験をいう。
注意点3. 日本語に対応していない
Glideを活用する際の注意点の3つ目は、日本語に対応していない点です。
Glideの公式サイト、サポート、コミュニティ、そしてツール内の表記は全て英語で、日本語には対応していないです。
しかし、Youtubeなどに日本語の解説動画はあるので、学習をするうえでは大きな支障はなさそうです。
開発するアプリの言語としては日本語も使えます。
注意点4. SEOやアプリストアでの集客が難しい
Glideを活用する際の注意点の4つ目は、SEOやアプリストアでの集客が難しい点です。
まず、Glideはトップページ以外はGoogleのクローラーによってクローリングされない仕組みになっています。
【意味・定義】クローリングとは?
クローリングとは、Googleなどの検索エンジンがウェブサイトを訪れてその情報を読み取り、検索結果に反映させるプロセスをいう。
このため、トップページ以外のページは、検索結果に表示されません。
これは、SEOでの集客がかなり難しいことを意味します。
また、Glideで開発するアプリはネイティブアプリではなくウェブアプリなので、App StoreやGoogle Playストアでの公開ができません。
SEOやアプリストアでの集客が難しいので、集客が必要なアプリを構築する場合は、他の手段を検討する必要があります。
Glideはこんな人におすすめ
以下に当てはまる場合は、Glideを使うのに適しています。
Glideはこんな人におすすめ
- 早く開発&リリースがしたい
- 予算が限られている
- シンプルな機能のみが必要
- 集客が不要(社内アプリなど)
Glideを活用することで、シンプルなアプリが安く、そして早く構築できます。
Glideの始め方
Glideの始め方
- 始め方1. テンプレートを使う
- 始め方2. 基礎の学習
- 始め方3. コミュニティーから学ぶ
- 始め方4. ブログをチェック
以下では、Glideを初めて使う方向けに、Glideの始め方をご紹介します。
始め方1. テンプレートを使う
Glideの始め方の1つ目は、テンプレートの利用です。
業種別に用意されているテンプレートから好きなものを選び、独自のアプリにカスタマイズしていきます。
テンプレートの選択画面では、アプリのスクリーンショットや説明動画がみれるので、作るアプリのイメージがしやすいです。
始め方2. 基礎の学習
Glideの始め方の2つ目は、基礎の学習です。
Glideの公式ドキュメントサイトには、アプリの初期設定から完成までの使い方マニュアルや動画が公開されています。
動画はGlideの公式Youtubeでもみれます。
また、Glideの公式学習サイト「Glide University」では、コースやレッスンの受講が可能で、実際を手を動かしながら学習できます。
参照:Docs(Glideの公式ドキュメントサイト) / Glide University(Glideの公式学習サイト) / Glideの公式Youtubeチャネル
始め方3. コミュニティから学ぶ
Glideの始め方の3つ目は、コミュニティから学ぶです。
ユーザー同士のコミュニケーションの場として提供されているGlideの公式コミュニティでは、Glideに関する質問や最新情報など、たくさんの情報アクセスができます。
作ったアプリのショーケースもできるので、他のユーザーが作ったアプリからアイディアを得ることもできるかもしれません。
【意味・定義】ショーケースとは?
ショーケースとは、製品やサービスなどを紹介するための展示場所やプレゼンテーションをいう。
始め方4. ブログをチェック
Glideの始め方の4つ目は、ブログをチェックするです。
Glideの公式ブログでは、Glideについてや最新テクノロジーなど、ITに関連する幅広いテーマのブログが読めます。
またGlideの新機能などについての記事もあるので、ぜひ読んでみてください。
参照:Glideの公式ブログ
Glideの料金プランは?
Glideでは、無料で使えるFreeプラン、そして3つの有料プランが提供されています。
Glideの料金プラン | ||||
---|---|---|---|---|
Free | Maker | Team | Business | |
料金 | 無料 | $60〜/月 | $125〜/月 | $310〜/月 |
推奨ユースケース | ノーコードでのアプリ構築の学習 | 小規模なコミュニティや組織で使うアプリを開発 | スプレッドシートを使って中規模のチーム向けのアプリを開発 | データベースを活用した強力なアプリを開発 |
公開アプリ数 | 1 | 1 | 無制限 | 無制限 |
※年払い割引あり
基本的な機能のみが使える無料プランに対して、有料プランにアップグレードすることで、高度な機能、詳細なカスタマイズ、外部サービスやDBとの連携、そしてGlide AIなどが使えるようになります。
より多くのデータの利用が必要になった際にも有料プランへの切り替えが必要です。
まずは無料プランでのテスト開発をしたうえで、要件にあった有料プランを選択するのがおすすめです。
Glideの導入事例
Glideは、国内外の多くの企業で使われています。
Glideの導入事例
Glideを活用した業務アプリ・業務改善とは
Glideで開発・構築できる業務アプリの具体例は?
Glideは、以下のような業務アプリの構築・開発にも利用できます。
Glideで構築・開発できる業務アプリの具体例
- 在庫管理アプリ
- 日報アプリ
- 請求書処理等の経理処理アプリ
- ワークフローシステム・電子稟議アプリ
- 顧客管理アプリ
Glideを利用してこうした業務アプリの開発や構築をすることにより、より効率的に業務を実施できる業務改善も期待できます。
GlideでMVPを開発して他のアプリ・システムに移行する
ただし、すでに述べたとおり、Glideはアプリの開発・構築が簡単であるために機能が限られており、シンプルな機能しか実装できません。
このため、Glide単体で開発・構築をしたアプリだけで業務改善をおこなうには、自ずと限界があります。
ただ、GlideはGoogleスプレッドシートなどをデーターベースとして使用することから、他の開発ツールやアプリ・システムへの移行もできます。
そこで、Glideで構築・開発するアプリは最低限の機能として、必要に応じて他の開発ツールやアプリ・システムへ移行する、という手法もできます。
このように、最低限の機能を盛り込んだプロダクトをMVP(Minimum Viable Product)といい、MVPを活用した開発手法をMVP開発といいます。
【意味・定義】MVP開発とは?
MVP開発とは、最低限の機能を盛り込んだプロダクト(Minimum Viable Product=MVP)を活用した開発手法を言う。
Appsheet等の他の開発ツールへの移行も視野に入れて開発する
例えば、Glide同様、ノーコード開発ツールであり、Glideよりも複雑で高機能なアプリの開発・構築ができるAppsheetへの移行も、技術的には可能です。
もちろん、Appsheet以外であっても、Glideと同じデータベースを使用するアプリ・システムには、技術的にはGlideから移行することができます。
当然ながら、Glideで開発したMVPからスクラッチ開発によるアプリ・システムへの移行やリファクタリングも選択肢になります。
ただし、これら場合は、あらかじめ他のアプリ・システムに移行することやスクラッチ開発を前提にアプリ開発・構築をしないと、移行やスクラッチ開発が難しくなったり、移行・スクラッチ開発ができたとしても、UI・UX等の使い勝手が著しく悪くなるリスクもあります。
場合によっては最初からAppsheetでの開発も検討する
例えば、GlideからAppsheetに移行する場合、すでに述べたとおり、少なくとも技術的には可能です。しかしながら、Appsheetは、Glideに比べるとデザインの部分では劣る点があります。
このため、GlideからAppsheetに移行した際に、UI・UXが大幅に変更され、場合によっては悪化するリスクもあります。
通常、社内で利用する業務アプリの場合は、外部に向けて販売するアプリに比べて、デザインを重視する必要はありません。
ただ、UI・UXが悪化すると、作業効率などが下がり、結果的に業務改善にはならなくなります。
このため、後で機能の拡張や追加等をする予定がある場合は、Glideではなく、最初からAppsheet等の別の開発ツールでアプリを開発することも検討するべきでしょう。
この他、AppSheetの業務アプリによる業務改善の導入事例・活用事例につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
まとめ
本記事では、Glideのメリットやデメリット、そしてGlideを使ったアプリ開発の始め方についてご紹介しました。
スプレッドシートなどのデータを取り込むだけで簡単にアプリが作れるGlideは、世界中で活用されています。
まずは無料で使えるFreeプランを利用して、テンプレートを活用したアプリを開発してみましょう。
Glideに関するよくある質問
- Glide(グライド)とはなんですか?
- Glide(グライド)は、スプレッドシートを基にして簡単にウェブアプリを作成できるノーコードプラットフォームです。
- Glideは無料で使えますか?
- はい、Glideは基本的な機能を無料で利用できます。
ただし、一定の利用制限があり、高度な機能や追加の利用量が必要な場合は有料プランへの切り替えが必要です。
- Glideの学習リソースはありますか?
- Glideの学習リソースとしては、公式ドキュメントサイトや、Glideの公式学習サイトがあります。