このページではプロダクトバックログについて、初心者の方にもわかりやすく紹介します。
プロダクトバックログとは、アプリやシステム等の開発手法のうち、アジャイル開発においてプロダクト(アプリ・システム等)の要求事項が優先度順で並んでいるリストのことを指します。
以下の記事では、プロダクトバックログの特徴やメリット、作成方法、スプリントバックログとの違いを解説します。
プロダクトバックログとは
プロダクトバックログは、アプリやシステム等のプロダクトに関する発注者の要求事項であり、プロダクトで達成する機能や内容に関する活動計画を土台にした開発チームの作業について、発注者が優先順位を設定したリストを指します。
【意味・定義】プロダクトバックログとは?
プロダクトバックログとは、アジャイル開発において、プロダクト(アプリ・システム等)の要求事項が優先度順で並んでいるリストのこと。
主にアジャイル開発におけるスクラム開発で運用し、高品質なプロダクトの完成度を高めるために重要なものです。
【意味・定義】アジャイル開発とは?
アジャイル開発は、ソフトウェア開発の手法の一つで、開発の途中で変更が起きることを想定し、短期間で細かな工程の開発と実装を繰り返し、製品のアップデートを細かく行う開発手法をいう。
【意味・定義】スクラムとは?
スクラムとはソフトウェア開発手法の一つで、短期間でシステム開発を進めるための方法論を中心にまとめられた方式をいう。
プロダクトバックログの特徴
プロダクトバックログの主な特徴として以下の3点が挙げられます。
プロダクトバックログの特徴
- チーム全体でメンテナンスをする
- 要求事項のリストはプロダクトオーナーが優先順位をつける
- 優先度が高いタスクから具体化する
以下、詳しく見ていきましょう。
特徴1.チーム全体でメンテナンスをする
プロダクトバックログの特徴の1つめは、チーム全体でメンテナンスをすることです。
アプリ開発を継続していると、プロダクトバックログは、日々変化することがあります。
こうした変化があった場合でも、プロダクトバックログは、チーム全体で既存の事項の変更や削除をしたり新しい要求事項を追加できます。
ただ、プロダクトバックログは、あくまでチーム全体でメンテナンスできるものです。
このため、個々のスクラムチームのメンバーが勝手にメンテナンスできるものではありません。
特徴2.要求事項のリストはプロダクトオーナーが優先順位をつける
プロダクトバックログの特徴の2つめは、要求事項のリストについて、プロダクトオーナーが優先順位をつけることです。
プロダクトバックログは、あくまで発注者によるプロダクトに関する要求事項です。
このため、要求事項のリストは、受注者のスクラムマスターではなく、プロダクトオーナーが優先順位をつけ、事項の緊急度や重要度を見極めてプロダクトバックログに反映させます。
【意味・定義】プロダクトオーナーとは?
プロダクトオーナーとは、アジャイル開発における発注側の責任者であって、製品(プロダクト)開発において、製品や開発の方向性を決める責任者をいう。
この他、プロダクトオーナーの役割につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
特徴3.優先度が高いタスクから具体化する
プロダクトバックログの特徴の2つめは、優先度が高いタスクから具体化することです。
プロダクトバックログでは、優先度が高いタスクほど、より具体的に定義づけます。
このため、優先度が高いタスクほど、より開発チームが実装しやすい状態になっています。
優先度が高いタスクから具体化することで、より早く、かつなるべく目標に沿った高品質なプロダクトを開発できます。
プロダクトバックログの作成方法
プロダクトバックログの作成方法の手順は以下の4点です。
プロダクトバックログの作成手順
- プロダクトゴールを設定する
- プロダクトバックログアイテム(PBI)をリストアップする
- リストアップしたPBIに優先順位をつける
- プロダクトバックログを定期的に更新する
順番に解説していきます。
プロダクトゴールを設定する
プロダクトバックログの作成手順の1つめは、プロダクトゴールの設定です。
プロダクトバックログの作成をするには、明確なゴールを設定することが大事です。
プロダクトゴールはプロダクトの将来の状態を表します。
【意味・定義】プロダクトゴールとは?
プロダクトゴールとは、プロダクトの将来の状態であり、同時にチームの長期的な目標のこと。
プロダクトゴールの設定では、ユーザーが今後開発するプロダクトで実現できるようになることを設定します。
明確なゴールを設定することが、プロダクトバックログの作成に重要なポイントとなります。
プロダクトバックログアイテム(PBI)をリストアップ
プロダクトバックログアイテム(PBI)とは?
プロダクトバックログの作成手順の2つめは、プロダクトバックログアイテム(PBI)をリストアップすることです。
プロダクトゴールの設定が決まったら、チームのメンバーにプロダクトバックログアイテム(PBI)を挙げてもらいます。
プロダクトバックログアイテム(PBI)とは、プロダクトオーナーが管理するプロダクトバックログに書き表した項目のことをいいます。
【意味・定義】プロダクトバックログアイテム(PBI)とは?
プロダクトバックログアイテム(PBI)とは、プロダクトバックログに書き表した項目のこと。
プロダクトバックログアイテムはチーム全体で抽出する
プロダクトバックログアイテム(PBI)は、特定のメンバーだけで考えるのではなく、チーム全員で抽出することが重要です。
プロダクトバックログアイテム(PBI)の書き出しは、要求事項にもとづきおこないます。
この際、具体的なものから抽象的なものまで幅広く盛り込んでいきます。
そして、抽出されたプロダクトバックログアイテム(PBI)について、技術的な実装手段は開発者が決定します。
このように、開発チームのメンバー全員が関与することで、プロダクトバックログアイテム(PBI)の抽出・開発・実装について具体的に決定できるようになります。
ステークホルダーからの要求はプロダクトオーナーが対応する
なお、アジャイル開発(スクラム開発)では、開発途中で、発注者のステークホルダーから機能追加や修正の依頼があることがあります。
【意味・定義】ステークホルダー(スクラム開発)とは?
スクラム開発におけるステークホルダーとは、発注者側の利害関係者をいう。
こうしたステークホルダーによる機能追加・修正の依頼があった場合、プロダクトオーナーが対応することとなります。
具体的には、プロダクトオーナーが発注者の内部の意見を調整・集約をしたうえで、開発チームと協議のうえ、プロダクトバックログアイテム(PBI)に追加するべきかどうかを検討します。
リストアップしたPBIに優先順位をつける
プロダクトバックログの作成手順の3つめは、リストアップしたプロダクトバックログアイテム(PBI)に優先順位をつけることです。
やることすべてをプロダクトバックログアイテム(PBI)にしたら、リスト化して優先順位が高いものから順につけていきます。
優先順位の設定は、皆が理解できる基準を明確にすることが大切です。
プロダクトバックログアイテム(PBI)に優先順位をつけることで、無駄な作業などのロスが減ります。
なお、すでに述べたとおり、プロダクトバックログアイテム(PBI)の優先順位はプロダクトオーナーに決定権があります。
プロダクトバックログを定期的に更新する
プロダクトバックログの作成手順の4つめは、定期的に更新することです。
プロダクトバックログは、一度作成したら終わりではなく、開発を進めながら品質改善していくことが必要です。
項目の更新をしたり、追加することをリファインメントと呼ぶことがあります。
プロダクトバックログを定期的に更新するのと同時に、優先順位も見直しておくとよいでしょう。
プロダクトバックログの優先順位のつけ方
プロダクトバックログの優先順位のつけ方のポイントは以下の2点です。
プロダクトバックログの優先順位のつけ方
- 緊急度と重要度を考慮する
- 複雑なタスクを優先する
プロダクトバックログは基本的に、優先順位が高いタスクが上の方に位置しているため、上にあるタスクから着手していきます。
優先度が高い順に、「何を」・「どのように」・「なぜ」行うのか綿密に設定することが大切です。
通常、ユーザーに最も影響を及ぼすタスクは、最優先事項になります。
緊急度と重要度を考慮する
一般的に、緊急度が高いタスクのほうが重要度が高いタスクより優先順位は高くなります。
ただし、プロダクトオーナーの優先順位づけに応じて、緊急度が高い仕事を差し置いてでも、その機能を完成させる必要もあります。
したがって、優先順位づけでは作業の段取りも考えなければなりません。
複雑なタスクを優先する
複雑なタスクを完了してしまえば、残りのタスクも順調に進めていくことができます。
プロダクトバックログの項目は、なおいっそう増えていくものです。
複雑だからという理由でタスクを後ろ倒しにしてしまうと、仕事の効率を下げる原因になります。
複雑なタスクを優先してこなすことが、プロダクト開発にとって最も効果的な方法といえるでしょう。
プロダクトバックログの失敗例と注意点
ここからは、プロダクトバックログの主な失敗例を挙げます。
プロダクトバックログの失敗例
- プロダクトバックログアイテムの優先順位が不明瞭
- 更新の頻度が適切でなくプロダクトバックログがあてにならなくなった
- プロダクトオーナーから記載されていない指示が多数出て、メンバーが混乱した
- プロダクトバックログに記載された内容が細かすぎて、読み込むことを負担に感じるメンバーが多かった
プロダクトバックログは作成したことがゴールではなく、作成してからの経過に重点を置かなければなりません。
プロダクト全体の進捗状況を把握し、定期的に更新し、よりよいものにするためには、わかりやすくシンプルに作成することが大切です。
上記のような失敗をしないためには、次の対策をする必要があります。
プロダクトバックログの主な注意点と対策は以下の4点です。
プロダクトバックログの注意点・対策
- プロダクトバックログのタスクを実行したらプロダクトが完了できる状態にする
- 開発途中でもプロダクトバックログを積極的に更新しメンバーに共有する
- チーム全体でコミュニケーションの機会を増やす
- 管理ツールを導入し、メンバーに利用を徹底させる
プロダクトバックログとスプリントバックログの違いについて
プロダクトバックログとスプリントバックログの違いを以下に挙げました。
プロダクトバックログとスプリントバックログの違い
- プロダクトバックログ:プロジェクト全体=プロダクトの要求リストやタスクのリスト
- スプリントバックログ:個々のスプリントで実行するタスクのリスト
プロダクトバックログとスプリントバックログは、文字通り、「プロダクト」のバックログと「スプリント」のバックログとなります。
つまり、プロダクトバックログは、プロダクト=プロジェクト全体の要求リストやタスクのことです。
他方で、スプリントバックログは、プロダクトバックログから枝分かれした、個々のスプリントにおける目標・作業内容・タスク等のリストとなります。
【意味・定義】スプリントバックログとは?
スプリントバックログとは、個々のスプリントにおける開発対象となった要求事項のリストについて、目標、作業内容、タスクのリストをまとめたログ(記録)をいう。
まとめ
プロダクトバックログの特徴やメリット、実際に作成する手順を紹介しました。
プロダクトバックログを運用することで、プロダクト全体の進捗状況を把握でき、やるべきことが明らかになります。
プロダクトバックログは、作成後も臨機応変にメンテナンスすることができ、更新・削除・編集が可能です。
今回紹介した作成手順を参考にして、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
プロダクトバックログに関するよくある質問
- プロダクトバックログの粒度について教えてください。
- プロダクトバックログの粒度は、プロジェクトの進行度やチームの状況により変化します。
一般的にプロダクトバックログの上位にあるアイテムは、優先度が高く、着手が早くなります。
反対に、下位にあるアイテムは、優先度が低く、着手が遅くなります。つまり、プロダクトバックログの粒度は、優先度が上位となるほど細かくなり、下位となるほど粗くなります。
また、プロダクトバックログを作成するときに、各アイテムに粒度を明記しておくことで、担当するメンバーが難易度と作業負担を把握できます。
粒度を適切に管理することでチームは必要な情報を効率的に共有することができます。
- 多くのプロダクトバックログアイテムを整理する方法を教えてください。
- 着手する時期が明確でないものや、着手できるかわからないものは、いったんまとめたうえで、着手を保留します。
また、全部眺めてみて不要なものは捨てることです。ほかには、アイテムをカテゴリーに分けることで関連するアイテムをまとめて管理できます。(例:機能・改善・バグ修正など)