本記事では、備品管理の担当者向けに、無料・低コストかつ高機能なAppSheetを活用した備品管理の電子化、そしてシステム・アプリを導入するメリットやポイントについて解説します。
備品管理・貸出管理の業務は、オフィス、製造業の現場(特に工場)、医療機関(特に病院)、学校、そして宿泊施設など、異なる数々の業界で実施されています。
組織の資産に大きく影響している備品管理・貸出管理の業務ですが、過剰購入や不適切な寿命管理に悩まされている組織は多く存在します。
こうした課題を解決する方法として、備品管理のシステムとしてAppSheetを活用する方法があります。
柔軟なカスタマイズ性があるAppSheetは、組織ごとの備品管理の課題に対応できますので、従来の備品管理システム・アプリに引けを取らないシステム・アプリを構築できます。
本記事では、備品管理・貸出管理の業務を電子化することによるメリット、特に無料・低コストかつ高機能なAppSheetを活用した備品管理システム・アプリの導入と備品管理業務の効率化・自動化についてご紹介します。
備品管理の課題とニーズ
備品管理の課題
備品管理業務は、企業が所有する物品や資産を効率的に追跡・管理し、最適な利用を促進するための重要なプロセスです。
このため、正しい備品管理プロセスを導入していないと、以下のような課題が発生するリスクが生まれます。
備品管理の課題
- 属人的な業務による不透明な管理
- 時間と労力の消費
- タイムミスや誤った情報の入力などのヒューマンエラー
- 複数拠点での情報の不一致
- 不正確な分析やレポート
- 不適切な会計処理
結果として業務の遅延や資産の無駄な使用が生じる可能性が高まります。
備品管理システムのニーズ
他方で、備品管理が必要な物品は数多くあるので、適切な管理を行い、資産の損失を防ぐことは大事になってきます。
備品管理システムのニーズ
- 業務の「見える化」
- 固定資産管理のための棚卸
- PCやスマホなどのIT機器の管理
- 机や椅子などの管理
- プロジェクターやカメラなどの社内備品の管理
- 社内に配備してある工具の管理
- 紙の文書管理
- 紙の廃棄管理
効率の良い備品管理プロセスを実現するためには、備品管理業務に特化したシステムやアプリの導入がおすすめです。
特にAppSheetを利用すると、企業ごとの管理方法に合わせた備品管理業務のシステム化・アプリ化が無料・低コストで簡単にできます。
AppSheetの概要と利点
AppSheetとは?
AppSheetは、Googleが提供するノーコードでアプリ構築ができる開発ツールのひとつで、低コストで、柔軟かつ比較的高機能なアプリ構築ができる点に特徴があります。
【意味・定義】AppSheetとは?
AppSheetとは、Googleが提供するノーコードプラットフォームの一種で、ユーザーがプログラミングの知識なしにアプリケーションを作成できるツールをいう。
AppSheetは国内外問わず多くの企業で使われているノーコードツールの一つで、プログラミングの知識がなくても簡単にカスタムアプリを作成できます。
ノーコード開発・ノーコードツールとは?
ノーコード開発とは、ソースコードを書かずに、つまりプログラミングせずに、アプリケーションやWebサービスの開発をする開発手法のことです。
【意味・定義】ノーコード開発とは?
ノーコード開発とは、プログラミングせず、ノーコードツールの使用により、ビジュアルなツールやドラッグ&ドロップ等の直感的な作業によるアプリケーションやWebサービスの開発が可能な開発手法をいう。
こうしたノーコード開発のために使われるツールのことを、「ノーコードツール」や「ノーコード開発ツール」といいます。
【意味・定義】ノーコードツールとは?
ノーコードツールとは、プログラミングの知識がなくても直感的な画面操作やドラッグ&ドロップでカスタムアプリを作成できるツールをいう。
ノーコードツールは、従来のプログラミングに頼らずにビジネスユーザーや非技術者でも手軽にアプリ開発ができるようにするためのプラットフォームです。
AppSheetでできること
AppSheetでできること |
|
---|---|
ノーコーディングアプローチ | プログラミング知識がなくても利用でき、ユーザーは直感的でわかりやすいインターフェースでアプリの構築が可能 |
スプレッドシートからの自動生成 | スプレッドシートにデータを入力するだけで、自動的にデータを基にアプリを生成することが可能 |
マルチプラットフォーム対応 | 異なるプラットフォーム(iOS、Android、Webなど)でシームレスに動作するため、様々なデバイスでアクセスが可能 |
セキュリティ機能 | 構築するアプリには厳格なセキュリティ機能が組み込まれるため、データの機密性とアクセス制限の確保が可能 |
リアルタイムデータ同期 | リアルタイムでデータを同期し、常にユーザーに最新の情報を提供することが可能 |
ワークフローの最適化と通知 | 独自のワークフローを設定し、通知を自動化することができるため、業務プロセスを迅速かつ効率的に管理することが可能 |
オフラインモード | インターネット接続がない状態でもアプリを使用できるオフラインモードの提供が可能 |
上記からわかるように、AppSheetでできることは多岐にわたります。
このため、AppSheetは、備品管理業務を含めた多くの業務改善アプリの構築に使われています。
AppSheetを活用して備品管理をシステム化・アプリ化するメリット
AppSheetを活用して備品管理をシステム化・アプリ化するメリット
- 自作による導入とカスタマイズ
- 導入コストが安い・無料
- 柔軟性と拡張性
- 迅速なプロトタイピング
- クラウドベースのデプロイメント
- シームレスな統合
メリット1. 自作による導入とカスタマイズ
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のメリットの1つ目は、自作による導入とカスタマイズが可能な点です。
すでに述べたとおり、AppSheetはノーコード開発ツールであるため、コーディングが不要です。
このため、気軽な導入と独自の業務フローに合わせた詳細なカスタマイズが簡単に実現できます。
カスタマイズの具体例
新しい備品を追加するためのフォームを作成する場合
- 「備品名」「カテゴリ」「数量」「所在地」「責任者」などの入力欄
- 写真のアップロード欄や備品の状態を選択するためのドロップダウンリスト
- 備品が低在庫になった場合に通知を送信するなどのワークフロー設定
メリット2. 導入コストが安い・無料
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のメリットの2つ目は、導入コストが安く、無料で使えるプランが提供されている点です。
AppSheetは、プログラミングスキルがない人でも簡単で効率的にシステムを構築ができるため、開発コストの削減が可能です。
また、自社サーバー費用などがかからないため、ランニングコストの削減効果も期待できます。
無料プランがある備品管理のシステムやアプリは多く存在しますが、AppSheetの低額なランニングコストにより、場合によっては無料で導入もできます。
AppSheetの料金表 | |||
---|---|---|---|
費用(ユーザー単位) | データベース数 | データベースのレコード上限数 | |
Starter | $5.00 | 5 | 2500 |
Core | $10.00/月 | 10 | 2500 |
Enterprise Plus | $20.00/月 | 200 | 200,000 |
参照:AppSheetの公式サイト、制限事項と既知の問題 – AppSheet ヘルプ
なお、AppSheetは、最大10名まではプロトタイプのアプリを共有できますので、10名以下の小規模事業者の場合は、ランニングコストが発生せず、無料で使用できます。
また、多くのGoogle Workspaceエディション(プラン)には、AppSheet Coreライセンスが含まれています。
このため、すでに該当するGoogle Workspaceエディションを導入している企業の場合は、AppSheetのランニングコストは無料となります。
この他、AppSheetの料金プランや無料枠につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
メリット3. 柔軟性と拡張性
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のメリットの3つ目は、柔軟性と拡張性がある点です。
AppSheetは、既存の要件変更や追加要件の対応がしやすく、簡単に調整や拡張ができます。
このため、季節性がある事業など、季節などに合わせて種類や属性が変わる備品を扱っている場合でも、AppSheetでれば対応できます。
メリット4. 迅速なプロトタイピング
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のメリットの4つ目は、迅速なプロトタイピングが可能な点です。
新しいアプリを構築する場合、アイディアを素早く落とし込んでプロトタイプ化することで、関係者に実際の動作を見せることができます。
【意味・定義】プロトタイプとは?
プロトタイプとは、アプリの具体的な動作やデザインを確認するための試作品をいう。
AppSheetのようなノーコード開発ツールは、こうしたプロトタイプを迅速かつ簡単に作成できる、という特長があります。
このため、AppSheetを使用することで、要件の調整や確認を迅速に行える、という点がポイントとなります。
メリット5. クラウドベースのデプロイメント
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のメリットの5つ目は、クラウドベースのデプロイメントが可能な点です。
【意味・定義】クラウドベースとは?
クラウドベースとは、アプリやデータが自分のコンピュータではなく、インターネット上のサーバーに保存されていて、どこからでもアクセスができる仕組みをいう。
【意味・定義】デプロイメントとは?
デプロイメントとは、アプリやシステムをネット上に公開し、実際に使えるようにするプロセスをいう。
AppSheetは、クラウドベースで提供されているため、デプロイメントやメンテナンスが容易です。
また、構築したアプリは、オンラインでアクセスが可能なため、地理的に分散したチームが利用しやすいのも特徴です。
メリット6. シームレスな統合
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のメリットの6つ目は、シームレスな統合が可能な点です。
AppSheetでは、様々なデータとの連携ができ、既存のデータやサービスを活用しつつ、容易に統合して新しいアプリを構築することができます。
AppSheetで統合が可能なデータ・サービスの具体例
- 外部メール
- SMS
- PDF変換
- バーコードスキャン
- ジオコーディング
- 地図(Google Maps)
上記のデータ・サービスは、あくまで一例に過ぎず、実際にはより多くのデータ・サービスとの連携が可能です。
このため、AppSheetの利用により、非常に柔軟な備品管理アプリ・システムを構築できます。
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化で実現可能な機能の具体例
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化で実現可能な機能の具体例
- データの登録と詳細情報の表示
- バーコード・QRコードスキャン
- 写真の添付
- ステータスの追跡
- データの検索とフィルタリング
- データの集計とレポート作成
- 通知とワークフロー
機能1. データの登録と詳細情報の表示
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の1つ目は、データの登録と詳細情報の表示です。
AppSheetでは、Googleフォームと連携することにより、カスタマイズされた入力フォームを作成できます。
これのフォーム機能により、備品名、カテゴリ、数量、所在地など、備品の詳細情報を簡単に入力するためのフォームを作成できます。
また、これらのデータは、備品の詳細情報として画面上に表示することができます。
このようなシステム・アプリを構築することで、新しい備品を手軽に追加できる一方で、詳細情報をすぐに確認できます。
なお、追加や更新された備品の情報は、連携しているデータベースに自動で反映されます。
機能2. バーコード・QRコードスキャン
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の2つ目は、バーコードスキャナを用いたバーコード・QRコードスキャン機能です。
AppSheetには、バーコード・QRコードスキャンの機能があります。
この機能により、備品を追加する際に、備品の管理情報をバーコードやQRコードにして備品に貼り付けることができます。
これにより、ユーザーは備品に付与されたバーコードやQRコードをスキャンするだけで、その備品の詳細情報を直ちに見つけることができます。
特に手入力での備品管理では、ヒューマンエラーが発生しやすいものですが、こうしたバーコード・QRコードスキャンの機能を導入することで、手入力の手間を省くことができます。
機能3. 写真の添付
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の3つ目は、写真の添付機能です。
AppSheetは、それぞれの備品に関する写真をアップロードできます。
この写真の添付機能を実装することで、備品の状態や特徴を視覚的に記録することができます。
備品の写真を保持することで、保守や点検の効率の向上が期待できます。
機能4. ステータスの追跡
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の4つ目は、ステータスの追跡機能です。
AppSheetは、それぞれの備品について、ステータス(状態)の記録・追跡ができます。
また、このような備品の最新状態をリスト表記とすることで、備品の状態を網羅的に把握できます。
このようなシステム・アプリを構築することで、備品の貸出状態やメンテナンス状況が一目で分かるようになるだけではなく、紛失や盗難などのリスクを軽減できます。
機能5. データの検索とフィルタリング
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の5つ目は、データの検索とフィルタリングです。
AppSheetは、各種データの検索やフィルタリングができます。これは、備品管理の場合も同様です。
このデータ検索とフィルタリング機能により、備品のカテゴリや所在地などの特定条件での検索や絞り込みが簡単にできます。
その結果、必要な情報に迅速にアクセスができるようになり、作業の効率がアップします。
機能6. データの集計とレポート作成
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の6つ目は、データの集計とレポート作成です。
AppSheetは、備品の貸出状況の集計や統計情報を使ったレポート作成ができます。
このようにシステム・アプリを構築することで、エクセルなどの他のツール等で利用できるデータ形式での出力も可能となります。
こうしたデータやレポートを活用することで、資産効率の向上や備品の最適な管理が実現可能です。
機能7. 通知とワークフロー
AppSheetで実現可能な備品管理の機能の7つ目は、通知とワークフローです。
AppSheetには、通知機能とワークフロー機能があります。
この通知機能とワークフロー機能を組み合わせることで、備品が一定数以下になる、返却期限となるなど、特定のイベント発生時にユーザーや管理者に自動的にリマインダーやアラートを送ることができます。
これにより、備品の欠品、期限切れ等の回避やタスクの漏れを防ぐことができます。
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイント
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイント
- データのリアルタイム性
- 利用者の多様性
- デバイスの利用
- トラッキングと分析
- 利用者のフィードバック
- トレーニングとサポート
ポイント1. データのリアルタイム性
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイントの1つ目は、データをリアルタイムで更新することです。
すでに述べたとおり、AppSheetは、リアルタイムでのデータの同期ができます。
こうしたリアルタイムでのデータ同期の機能を実装することで、スムーズな管理が可能となります。
特に、変動が激しい備品状況は、即座にデータの更新を反映することで、常に最新の情報が利用できるようになります。
ポイント2. 利用者の多様性
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイントの2つ目は、利用者の多様性に注意を払うことです。
備品管理の業務では、組織が大きくなるにつれて、多様な利用者が関与することとなります。
具体的には、異なるニーズやアクセス権を持つユーザが備品を扱うこととなります。
このため、AppSheetでシステム・アプリを構築する際にも、それぞれの特定の要求や権限に対応する必要があります。
ポイント3. デバイスの利用
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイントの3つ目は、デバイスの利用を可能にすることです。
備品管理は、現場での利用が一般的なため、モバイルデバイスやタブレットからアクセスできるようにすることで、柔軟な利用環境の提供が実現します。
この点について、AppSheetは、マルチプラットフォーム・マルチデバイスに対応しています。
このため、AppSheetは、多くのOS(Windows、macOS、Android、iOS)や各種デバイス(PC、タブレット、スマートフォン)などで、横断的に使用できるシステム・アプリを構築できます。
ポイント4. トラッキングと分析
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイントの4つ目は、トラッキングと分析です。
すでに述べたとおり、AppSheetは、それぞれの備品について、ステータス(状態)の記録・追跡ができます。
このため、備品の利用状況や動向を常に記録できるシステム・アプリを構築できます。
これらのデータを分析することで、備品やリソースを効率的に配置することが可能となります。
ポイント5. 利用者のフィードバック
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイントの5つ目は、利用者のフィードバックを反映することです。
AppSheetに限らず、業務システム・業務アプリを導入する前の段階では、ユーザーの意見を聞き、システムの適用範囲や改善点について理解を深めることが重要となります。
また稼働後も、定期的にユーザーのフィードバックをシステム・アプリに反映させることが望ましいです。
特に、Appsheetは、Googleフォームと連携することにより、ユーザーからの意見・要望のフィードバック情報を収集するためのフォームも作成できます。
このフォーム機能を利用することで、ユーザーからのきめ細かい意見や要望を把握でき、システム・アプリの改善に役立てることができます。
ポイント6. トレーニングとサポート
AppSheetによる備品管理のシステム化・アプリ化のポイントの6つ目は、トレーニングとサポートの提供です。
AppSheetに限らず、業務システム・業務アプリを導入する場合、アナログな業務からのシステム化・アプリ化や既存のシステム・アプリからの移行などに対するトレーニング・サポートが重要となります。
どんなに高機能・高効率なシステム・アプリであっても、ユーザーが使いこなせなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。
このため、単にシステム・アプリを構築・導入をするだけではなく、構築・導入したシステム・アプリの使い方のトレーニングプログラムや必要なサポートも重要となります。
まとめ
備品管理システムの導入は、正確で効率的な情報管理を実現し、企業の資産損失のリスク管理を強化します。
他方で、現場の実態や業務に合っていない備品管理システムを導入してしまうと、不正確な需要予測や寿命管理をしてしまうなど、備品管理システムの効果を最大限に活用できない可能性があります。
こうしたリスク・課題に対応する方法として、AppSheetを活用した備品管理システムの構築・アプリ化があります。
AppSheetは、従来の備品管理に合わせてシステム・アプリを自由に構築できるので、低コストで最適な備品管理システムの導入を考えている方におすすめです。
当社では、こうしたAppSheetを含めたノーコードツールを活用した業務アプリ・業務システムの開発会社の選定をサポートしております。
業務アプリ・業務システムの開発・導入でお悩みの方は、今すぐご連絡ください。