業務プロセス改善とは?中業企業における進め方とポイントを解説

「業務がうまく回っていない気がするが、どこから手をつければいいか分からない」そんな漠然とした課題を抱えていませんか?

中小企業では、人手不足や属人化、紙・エクセル中心の業務など、非効率な状態が当たり前になっていることが少なくありません。こうした状況は、一見して個々の業務が非効率であるかのように見えます。

しかし、それらの多くは、実は個々の業務の問題ではなく組織の構造に起因することが多く、「業務プロセスの見直し」で改善できる可能性があります。

本記事では、「業務プロセス改善とは何か?」という基本から、実際にどう進めればよいのか、失敗しないためのポイントまでをわかりやすく解説します。

現場を混乱させず、小さく・確実に進める方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

業務プロセス改善とは?目的・意味・効果をわかりやすく解説

まずは、業務プロセス改善の概要をご紹介します。

業務プロセスとは何か?企業活動を支える「全体の流れ」

業務プロセスという用語は、さまざまな意味合いがあり、使う人や文脈によって大きな違いが出てしまいがちな用語です。

このため、「業務プロセス」は、その定義や理解、そして後述の「業務フロー」との違いが、非常に重要となります。

この記事では、「業務プロセス」を組織全体の構造上の問題として、以下のように定義づけています。

【意味・定義】業務プロセスとは?

業務プロセスとは、企業が営利を獲得するまでの活動全体における一連の業務過程や手順、フローの組み合わせをいう。

業務フローとは何か?チームや個人が担当する「個々の業務の流れ」

これに対し、業務プロセスと似た用語として「業務フロー」がありますが、こちらは個々の業務の問題として、以下のように定義づけています。

【意味・定義】業務フローとは?

業務フローとは、個々の部署、チームまたは個人が関与する、特定の目的を達成するための業務の情報・物品等や流れ、担当者を示したものをいう。

このため、個々の業務フローの改善により、結果的に業務プロセスも改善されることはありえます。

しかしながら、業務フローの改善は組織や業務全体の構造が改善されることはないため、業務フローの改善による業務プロセスの改善は、いずれ頭打ちになることが多いです。

もちろん、業務フローの改善も、事業活動において重要であることは言うまでありません。

「業務プロセス」「業務フロー」の違いは?表でわかりやすく解説

このように、「業務プロセス」が企業活動全体の一連の手順や構造を指すのに対し、「業務フロー」は特定の業務の手順や流れを図や工程を意味します。

この違いについて、それぞれを構成する要素で分解して表にすると、以下のようになります。

「業務プロセス」「業務フロー」の違い
業務プロセス 業務フロー
定義 企業全体の営利を達成するまでの、複数の業務フローを組み合わせた一連の業務過程・手順 特定の目的を達成するための、業務の担当者や扱う情報・物品、流れを示したもの
対象範囲 全社レベルの広範な活動 部署・チーム・個人などの限定された単位
構成要素
  • 複数の業務フロー
  • 部署間のインターフェース(接続点)
  • フロー間の依存関係
  • 組織の構造
  • タスク
  • 担当者
  • 情報の流れ
  • 物品の受け渡し
目的 顧客価値の創出や収益最大化など、企業戦略に基づく業務全体の最適化 経費申請や受発注など、特定の業務処理の効率的な精緻化
管理単位 経営層、業務改革部門やDX推進部門など チームリーダーや業務担当者
  • 製品開発プロセス
  • 受注から納品・請求・回収までの営業プロセス
  • 顧客獲得からアフターサービスまでの業務全体の流れ
  • 見積書作成の流れ
  • 備品購入申請の手続き
  • 請求処理フロー
可視化手法
  • プロセスマップ
  • BPMN図
  • 業務KPIダッシュボード
  • フローチャート
  • 業務手順書
  • スイムレーン図
改善アプローチ
  • BPR(業務改革)
  • SaaS導入
  • ノーコード・内製化など経営視点での改革
  • マニュアル整備
  • RPA導入
  • 担当の明確化など現場主導の業務改善
管理の観点・運用要素
  • 管理指標(KPI)
  • 部門間連携
  • 業務目標の明確化と整合性の確保
  • 処理基準・判断基準
  • チェックリスト
  • 業務マニュアル・作業手順書
  • 実施記録
関連する課題キーワード
  • サイロ化
  • 部門間連携不足
  • 戦略との不整合
  • 全体最適と部分最適のバランス
  • 属人化
  • 手戻り
  • 重複作業
  • 非効率

なぜ今、業務プロセス改善が求められるのか?中小企業が抱える課題

現在、多くの企業が業務プロセス改善を経営の重要課題として位置付けています。

これは、業務プロセス改善には、以下の大きなメリットがあるからです。

業務プロセス改善のメリット
メリット 内容 具体例
1. 業務の効率化 重複・ムダな作業を省いた処理スピードの向上
  • 受注〜納品までに必要な社内承認日数を3日から1日に短縮
2. コスト削減 不要な人件費や外注費、管理コストの抑制
  • チェック作業を自動化し、月20時間の残業を削減
3. 品質向上・ミス削減 手順の標準化により、入力・確認漏れや人的ミスを抑止
  • 請求漏れがゼロ
  • 誤発注が3分の1に削減
4. 属人化の解消 業務の可視化・標準化により、特定の人にしかできない状況を排除
  • 顧客対応・出荷業務が担当者の不在や退職でも継続できる体制に
5. 顧客対応力の強化 顧客対応の迅速化やレスポンス品質の向上により、信頼感を高める
  • 問い合わせ対応が即日から数時間以内に短縮
  • リードタイム短縮によりリピート率が向上
6. 従業員満足度の向上 就業・残業時間の削減によるプライベートの充実化や作業の無駄・精神的負担の軽減による働きやすい環境づくり
  • マニュアル整備により新人教育の時間を半分に短縮
  • 属人業務の見直しで担当者の対人ストレスを軽減
7. 意思決定の迅速化 データの自動集計や可視化と管理者へのリアルタイム共有
  • 会議前の資料準備が不要
8. 業績改善の基盤整備 全体のボトルネック解消による売上・利益の最大化
  • 営業→受注→納品の業務フローを統合
  • キャッシュフローの早期化を実現
9. DX推進の契機 業務構造の把握によるITツールやノーコード導入の土台づくり
  • 業務の可視化・標準化によりSaaS導入がスムーズに
  • ノーコードでのシステム内製化が加速
10. リスク回避・法令対応 プロセス管理の強化によるトラブル・コンプライアンス違反の予防
  • 二重請求や契約更新漏れを防止
  • ISOや内部監査への対応がスムーズ
11. 人手不足への対応・省人化 業務の見直しによる少人数でも業務が回る仕組みの構築
  • 日報作成や集計作業を自動化し、1人分の工数を削減
  • 派遣に頼らず既存人員で対応できる体制を構築

業務プロセス改善の目的とは?7つの導入メリットを解説

また、ひと言で「業務プロセス改善」と言っても、企業によってその目的は大きく異なります。

業務プロセス改善の主な目的は、顧客価値の創出や収益最大化など、企業戦略に基づく業務全体や組織構造の最適化です。

具体的には、以下のとおりです。

業務プロセス改善の目的
業務効率化・生産性向上 従業員が付加価値の高い業務に集中できる環境を創出し、同じ時間でより多くの成果を得る
コスト削減 人件費やシステム維持費、工程や作業などの無駄や重複を排除し、企業の収益を向上させる
製品・サービスの品質向上 業務プロセスの標準化によりミスを抑制し、製品やサービスの品質を安定させ、顧客からの信頼獲得に繋げる
リスクマネジメント強化(内部統制の確立) チェック体制の強化により不正や情報漏洩などのリスクを低減し、企業としてのガバナンスを強化する
顧客満足度(CS)および従業員満足度(ES)の向上 効率的なプロセスにより、サービスの品質と提供スピードを高めると同時に従業員のストレスを軽減し、顧客と従業員双方の満足度を向上させる
DX推進の基盤づくり デジタル技術と既存業務の適合性を見極め、必要に応じてプロセスを再構築する
働き方改革との連携 ペーパーレス化やクラウドツール導入を通じて、場所や時間に縛られない多様な働き方を可能し、業務プロセスと働き方改革を密接化させる

中小企業の業務プロセスに潜む4つの課題とその解決策

続いて、企業が抱える業務プロセスの主な課題と解決方法をご紹介します。

すでに触れたように、「業務プロセス改善」には大きなメリットがあり、企業ごとに目的があります。

言い換えれば、これは企業には業務プロセス改善によって解決するべき課題があるということです。

特に中小企業にとっての主な課題は、次のとおりです。

企業が抱える業務プロセスの主な課題
  • 課題1. アナログ業務からの脱却の遅れ
  • 課題2. 「属人化」
  • 課題3. 組織全体の連携不足とサイロ化
  • 課題4. 新規事業や環境変化に対する不十分な対応

課題1. アナログ業務からの脱却の遅れ

企業が抱える業務プロセスの主な課題の1つ目は、アナログ業務からの脱却の遅れです。

多くの企業では、手作業や紙媒体に依存したアナログ業務が未だに残っていて、デジタル化の推進が遅れています。

課題の具体例
  • データ入力、書類作成、稟議申請などが手作業で行われ、無駄な時間とコストが発生
  • 導入済みのシステムが現場の業務と乖離し、非効率な二重入力や手作業での補完が生じている
  • RPAやAIなどの最新技術の導入が停滞している

業務プロセス全体を見直すには、「便利なシステムを導入する」ことも重要ですが、それ以上に「誰でも直感的に使えること」を前提としたデジタル化の推進が求められます。

特に、便利なシステムを導入した結果、ITに苦手意識のある「アナログ人材」では使いこなすことができない、という事態に陥りがちです。

こうしたアナログ人材を排除するのではなく、アナログ人材でも負担なく扱えるツールやシステムで対応することや、研修等を通じてアナログ人材が使えるようにスキルアップすることが重要です。

アナログ人材でも使える、あるいはちょっとした研修等で使えるようになるシステムこそ、本当に「便利なシステム」であり、こうした構造上の改善こそが業務プロセス改善と言えます。

解決方法の具体例
  • 手作業によるデータ入力を自動化システムに置き換え、承認プロセスをワークフローシステムで電子化する
  • 既存システムの活用方法を再検討し、業務フローに合わせてシステムを最適化することで、二重入力を排除し、効率的なデータ連携を実現
  • 単にシステム・ソフトの見直しだけで対応するのではなく、研修等によるスキルアップを併用し、「アナログ人材」でも対応できるシステム・ソフトの導入により、無理なくデジタル化を推進する

課題2. 「属人化」

企業が抱える業務プロセスの主な課題の2つ目は、業務の「属人化」です。

【意味・定義】業務の属人化とは?

業務の属人化とは、一般に、特定の個人や従業員に業務プロセスの情報や知識・技術が依存している状態をいう。

属人化の原因は、特定の担当者ではなく、業務が個人に依存する組織の構造そのものにあります。

解消するには、業務プロセス上の構造的な問題の把握が必要がです。

課題の具体例
  • 担当者のスキルや経験によって業務の質やスピードにばらつきが生じ、均一な品質が保たれない
  • 担当者不在時の業務停止や引き継ぎ困難による生産性低下、退職・異動時の業務滞留

こうした課題を解決するには、属人化した業務の課題を可視化し、業務が属人化する構造上の問題点を解消することで、組織で業務対応をする構造を再構築することが必要となります。

解決方法の具体例
  • 属人化した業務(=課題)の可視化(細分化、名づけ、定義づけ等)をしたうえで、各業務の業務分掌と担当部署を明確にし、特定の個人に業務が集中しないようにする。
  • システムや社内規定において各業務の担当者の権限と責任を明確にし、物理的にもルール上も権限がある担当者のみが業務対応をするようにし、権限外の担当者に業務が集中しないようにする。

重要な点は、業務プロセスの改善は、属人化する構造やプロセスを改善することであって、結果的に属人化した業務を改善することではない、ということです。

具体的には、佐藤さんに集中している業務を誰でもできるように構造を改めることが属人化の解消=業務プロセスの改善です。

これに対し、佐藤さんの業務を効率化することは、属人化を固定したままの業務フローの改善です。

後者の業務フロー改善は、属人化の解消になっていないため、いくら効率化したとしても、いつか佐藤さん個人に限界がきてしまい、結果的に組織の成長にとってボトルネックになってしまいます。

課題3. 組織全体の連携不足とサイロ化

企業が抱える業務プロセスの主な課題の3つ目は、組織全体の連携不足とサイロ化です。

【意味・定義】 サイロ化とは?

サイロ化とは、部門やチームが担当業務の領域に閉じこもり、他部門と連携を取らずに独立して動く状態をいう。

サイロ化は、「縦割り」や「タコツボ化」とも呼ばれています。

部門間やチーム間の連携不足による「サイロ化」「縦割り」「タコツボ化」は、業務プロセスを非効率にする大きな要因となります。

課題の具体例
  • 各部門が独自のルールやツールで業務を進めるため、情報共有が滞り、意思決定の遅延や重複作業が発生
  • 各部門が自部門の効率化ばかりを追求する「部分最適化」が、結果的に組織全体の最適化を阻害
  • 業務プロセス全体が見えないため、問題発生時に責任範囲が不明確になる

この課題を解決するには、業務分掌を明確にしたうえで、部門横断で連携できる業務プロセスを策定し、組織全体の視点でプロセスを最適化することが必要となります。

全体の視点からプロセスを見直すことで、サイロ化による非効率を排除し、組織全体での最適化が図れます。

解決方法の具体例
  • 情報共有プラットフォームの導入や定期的な合同会議の実施により、部門間の壁を取り払い、スムーズな情報連携を促進する
  • 各部門のKPIを組織全体の目標と連動させることで、部分最適化ではなく全体最適化を目指す

課題4. 新規事業や環境変化に対する不十分な対応

企業が抱える業務プロセスの主な課題の4つ目は、新規事業や環境変化に対する不十分な対応です。

新規事業や環境変化への対応は、トップダウンでおこなわれることが多いものですが、現場への根回しが不十分な場合は、最初からつまづくことになります。

このため、現場からの反発を招かないためには、新規事業や環境変化への対応の際には、あらかじめ業務プロセスの大枠を設計し、現場への根回しをしておくことが重要となります。

こうした根回しをしておかないと、現場が独自で「業務フロー」を構築してしまい、結果的に行き詰まる原因となります。

課題の具体例
  • 現場がリソース不足の状態で、十分な準備をせずに新規事業を始めてしまうと、業務プロセスの設計ができずに、最初から躓くこととなる。
  • おおまかでも業務プロセスの設計をしておかないと、各部門の現場が目先の対応をするために独自に「業務フロー」を構築してしまい、結果的に行き詰まる。

新規事業は、「一から業務プロセスを構築できる」業務最適化のチャンスでもあります。

組織的・構造的に業務対応できる体制を、最初から整えることが重要です。

解決方法の具体例
  • 新規事業立ち上げ時には、担当する現場の部署に事前に説明と根回しをしておき、既存業務と両立するように十分にリソースを確保する。
  • 新規事業開始前に、おおまかでもいいので業務プロセスを設計しておき、現場が独自に「業務フロー」で課題を解決することを防止する。
  • 長期的な拡張性を考慮した業務プロセスを設計することで、すぐに行き詰まることのないような体制にする。

【実践ガイド】業務プロセス改善の進め方6ステップ

それでは、業務プロセス改善の具体的な進め方をみていきましょう。

業務プロセス改善の具体的な進め方(5ステップ)
  • ステップ1.課題となっている業務プロセスの「見える化」(As-Is)
  • ステップ2.課題の抽出
  • ステップ3.ECRS原則で改善案を設計
  • ステップ4.目標の設定
  • ステップ5.スモールスタートでの改善の実行・検証
  • ステップ6.PDCAサイクルでの継続的な改善と仕組み作り

ステップ1.課題となっている業務プロセスを「見える化」(As-Is)

業務プロセス改善の具体的な進め方の1ステップ目は、課題となっている業務プロセスの「見える化」(As-Is)です。

このステップでは、課題となっている業務プロセスを特定したうで、その関連する業務が「どのように行われているか」を正確に把握し、誰もが見て理解できるようにします。

現場の担当者にヒアリングする際は、担当者ごとの「やり方の違い」や「非公式な手順」も漏れなく記録しましょう。属人化された手順が可視化のカギです。

ポイントは、あくまで「課題となっている業務プロセス」を特定することであって、すべての業務を可視化することではありません。

これは、すべての業務を可視化するとキリがないからです。つまり、業務プロセス改善の第一歩は、あくまで「課題ありき」ということです。

「見える化」の手法
ヒアリング・観察
  • 業務内容、時間、問題点などの詳細な聞き取りや実地視察
業務フロー図の作成
  • ヒアリングや観察で得た情報を基に、業務の流れを図として明確に可視化する
  • 「誰が、いつ、何を、どのような手順で」を明確に記述し、関係者と認識のズレや齟齬がないか確認する
  • BPMN等の標準的なモデル図を使用することで、理想(To-be)と現実(As-Is)の乖離を正確に表示する

課題の見える化では、「こうあるべき」という理想としての「To-be」ではなく、「実際にどうなっているか」をありのままに表現する「As-Is」での描写が重要です。

例えば、図やフローを描く際に「理想的な流れ」を描いてしまうと、実態とのズレが出ます。繰り返しになりますが、必ず「今やっている手順(As-Is)」をそのまま整理してください。

思い込みや思想を排した事実ベースでの業務の可視化が、的確な課題発見と効果的な改善につながります。

当然ながら、「悪い状態」をありのままに表現するわけですから、批判や叱責があってはなりません。

ステップ2.課題の抽出

業務プロセス改善の具体的な進め方の2ステップ目は、課題の抽出です。

このステップでは、「見える化」した業務プロセスから非効率な点や問題を特定し、改善の方向性と目標を明確に設定します。

具体的な課題の洗い出し
課題のリストアップ
  • 具体的な課題をリストアップすることで、共通する「課題の束」から業務プロセスの問題点を可視化する。
    • 例)社内全体での情報共有が課題となっているところ、部署ごとに独自に導入したシステムを運用しているため、部署間での情報共有がシステムではおこなわれず、人力でおこなわれている。
部署間の連携不足の把握
  • 各部署が縦割りで業務を完結しており、部門間の情報連携がうまくいっていない。
    • 例)支払い処理を遅延させる調達と経理の連携不足
    • 例)法令違反リスクを抱える営業と法務の連携不足
優先順位の設定
  • 業務への影響度や緊急性、ROIを考慮し、優先順位を付けて改善する。

ステップ3.ECRS原則で改善案を設計

業務プロセス改善の具体的な進め方の3ステップ目は、ECRS原則での改善案の設計です。

このステップでは、、明確になった課題をを解決し、具体的な改善策を検討・策定します。

課題を解決・達成するための具体策の考案に有効なフレームワークは、「ECRS(イクルス)」の原則です。

ECRS(イクルス)の原則
Eliminate(排除) 本当に必要な業務か?思い切って無くせないか?
Combine(結合) 類似した業務や手順は一つにまとめられないか?
Rearrange(再配置) 業務の順序や担当者の入れ替えにより効率化できないか?
Simplify(簡素化) 手順や処理を簡素化できないか?作業のステップを減らせないか?

この際、まず「なくせる業務(Eliminate)」から着目し、次に「まとめる(Combine)」「並び替える(Rearrange)」「簡素化する(Simplify)」という順で検討すると効果的です。

また、新しい仕組みを加える前に、「既存のムダを減らす」ことを優先しましょう。

例えば、新システム導入ありきで話を進めるような、手段が目的化しないよう注意が必要です。

ステップ4.目標の設定

業務プロセス改善の具体的な進め方の4ステップ目は、目標の設定です。

目標の設定は、改善案の策定の前ではなく、改善案の策定の後におこないます。これは、目標ありきの改善案では実現不可能になりやすく、結局は「絵に描いた餅」となって失敗するリスクがあるからです。

つまり、実現可能な改善案の範囲内で設定した目標を追求することに意義があります。

この際、「処理時間」「ミス発生数」「問い合わせ件数」など、定量化しやすく、改善後に効果測定できる指標を選定すると、後工程がスムーズになります。

これに対し、目標が抽象的すぎると、改善の成否が判断できません。「問い合わせ対応を早く」ではなく、「問い合わせ対応を24時間以内にする」など明確な数値を設定しましょう。

ステップ5. スモールスタートでの改善の実行・検証

業務プロセス改善の具体的な進め方の5ステップ目は、スモールスタートでの改善の実行・検証です。

このステップでは、策定した改善案の全社導入前に影響の小さい部署でスモールスタートし、リスクを抑えつつ実行可能性を検証することで、本格導入への確信を得る段階です。

このステップの成功のポイントは、とにかく「小さく始める」ことです。

まずは1チームや1フローに限定して改善策を試してみて、成果が出れば他部署にも展開しやすくなります。仮に失敗したとしても、ダメージは少なく済みます。

また、試行時は現場の意見を細かく拾いましょう。運用ルールやツールの不一致で改善が頓挫することも多いため、改善後の「運用しやすさ」を優先して設計することが重要です。

ステップ6. PDCAサイクルでの継続的な改善と仕組み作り

業務プロセス改善の具体的な進め方の6ステップ目は、効果検証と継続的な改善(PDCAサイクル)です。

このステップでは、業務プロセス改善がいったん完了した後で、その効果を検証し、さらに継続的に改善します。

改善の定着には、定期的なレビューと改善サイクルの「習慣化」が重要です。

月1回の振り返り会議など、継続的なフォロー体制を作ると定着しやすくなります。

また、改善後の効果が曖昧なまま次の施策へ進むと、現場が疲弊したり「改善疲れ」に陥ることがあります。

このため、成功体験を見える化し、社内に共有する場を設けましょう。

PDCAサイクル
Plan(計画) 新たな課題の改善計画の立案
Do(実行) 改善策の実行
Check(評価) 実行結果の検証・評価
Action(改善) 評価に基づく改善策の立案・実行

成功する業務プロセス改善に必要な5つの実践ポイント

以下に、改善を成功に導くための重要なポイントを紹介します。

業務プロセス改善を成功させるためのポイントとコツ
  • ポイント1. まず動く。完璧主義を手放すことが成功のカギ
  • ポイント2. 小さな成功を重ね、全社展開へつなげる
  • ポイント3. 現場の声を聞くことで、定着率が上がる
  • ポイント4. 改善後の仕組みを定着・維持する運用体制づくり
  • ポイント5. 外部の専門家・ツールを上手に取り入れる

ポイント1. まず動く。完璧主義を手放すことが成功のカギ

業務プロセス改善を成功させるためのポイントの1つ目は、完璧を目指しすぎないことです。

業務改善に取り組むと、「すべての問題を一気に解決しよう」としてしまいがちです。

しかし、現場では思い通りに進まないことも多く、完璧を追求しすぎると手が止まってしまいます。最初から100点を目指すのではなく、「まずやってみる」ことを重視しましょう。

具体的には、まずは小さく始め、フィードバックを得ながら柔軟に改善を繰り返す「アジャイル」なアプローチが現実的です。

小さな成功体験を積み重ねると、改善の効果を実感しながら徐々に範囲を広げていくことが可能です。

ポイント2. 小さな成功を重ね、全社展開へつなげる

業務プロセス改善を成功させるためのポイントの2つ目は、「小さく始めて、大きく育てる」です。

最初から大規模な改善に着手すると、現場の負荷が大きくなり、抵抗感も生まれやすくなります。

まずは1つの部署や1つのフローなど、小さな単位から始めて成功体験を積み重ねることで、改善の流れを自然と社内に広げていくことができます。

この際、小さな成功事例を作り、現場の「やってみよう」という意欲を引き出し、改善への心理的ハードルを下げることが重要です。

成功事例は他部署や経営層への説得材料となり、組織全体の協力体制を築くきっかけにもなります。

ポイント3. 現場の声を聞くことで、定着率が上がる

業務プロセス改善を成功させるためのポイントの3つ目は、環境の意見を積極的に取り入れることです。

業務プロセスの実行主体はあくまで現場です。

経営層や管理職だけでなく、現場の声を丁寧に吸い上げ改善策に反映させることで、実態に即した改善が可能になります。

改善の検討段階から現場の声を聞いておくことで、運用時の課題が事前に把握でき、改善内容の納得感も高まります。

また、現場の意見が尊重されると従業員の当事者意識も高まり、改善策の定着にもつながります。

ポイント4. 改善後の仕組みを定着・維持する運用体制づくり

業務プロセス改善を成功させるためのポイントの4つ目は、改善後の運用体制を確立することです。

せっかく改善した業務も、担当者が変わったり管理が不十分だったりすると、元に戻ってしまうことがあります。

個々の業務フローやルールを文書化し、管理体制や教育体制を整備することで、改善の効果を長期的に維持することができます。

運用体制の具体例
部門横断での持続的なモニタリング 月一回の定例会議等における定点観測で計測、フィードバック、報告を行い、実装前後の変化・改善を実感
改善後の構造の定着化 定着していない場合は、再度構造上の課題を洗い出し、さらなる改善策を実装
標準の作業手順やマニュアルの文書化 改善された業務プロセスでの新たな属人化を防ぐため、標準作業手順書(SOP)やマニュアル文書を作成
業務プロセスを更新する仕組みの構築 環境の変化や新たな課題に備えて運用状況を定期的に確認し、必要に応じて更新
他の部署でも活用できる仕組みの構築 成功事例は、情報共有の場を設けたりテンプレート化したりして他部署でも活用可能にし、組織全体を効率化

業務フローの最適化と継続的な見直しが、組織の業務プロセス改善を成功させる鍵です。

ポイント5. 外部の専門家・ツールを上手に取り入れる

業務プロセス改善を成功させるためのポイントの5つ目は、外部リソースの活用も検討することです。

自社だけで業務改善を進めようとすると、判断に迷ったり、リソースが足りなかったりすることもあります。

専門家による相談、外部事業者(BPO)、ノーコードツールやSaaSなど、外部の知見を上手に取り入れることで、スピード感を持って確実に改善を進められます。

外部リソースの具体例
コンサルティングの活用
  • 業務改善の専門家が、客観的な視点と知見で課題の洗い出しから改善実行まで支援
  • 社内のノウハウやリソースが不足している場合や大規模改善に特に有効
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の活用
  • 定型業務や専門業務を外部委託し、社内リソースをコア業務に集中
  • 効率化、品質向上、コスト削減を同時に実現
ノーコードツール・SaaSの導入支援
  • 専門知識がなくても使えるツール(例:AppSheet、Glide、Bubbleなど)を活用し、業務の自動化・効率化を実現
  • 既存業務に適したSaaSを選定・導入することで、短期間での改善が可能
  • ノーコード開発の伴走支援により、内製化も視野に入れた柔軟な改善体制を構築

業務プロセス改善に役立つフレームワークとツール

最後に、業務プロセス改善に役立つフレームワークやツールをご紹介します。

業務プロセス改善に役立つフレームワークとツール

主要なフレームワーク

  • PDCAサイクル
  • OODAループ
  • ECRS(イクルス)の原則
  • BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記法)

業務プロセス改善を加速させるITツール

  • ワークフローシステム
  • BPM(ビジネスプロセスマネジメント)ツール
  • RPA(Robotic Process Automation)
  • ノーコード・ローコード開発ツール

その他

  • 文書管理システム
  • データ分析ツール
  • コミュニケーションツール

業務プロセス改善は「内製」か「外部委託」か?メリット・デメリット比較

最後に、業務プロセス改善にあたって、社内で内製化する場合と外部の事業者に委託する場合のメリット・デメリットを提示します。

業務プロセス改善の内製化と外部委託のメリット・デメリット比較表
観点 内製化 外部委託
コスト 表面上の支出は少ないが、人件費や学習コストが比較的高い。 専門知識に対する費用は必要だが、短期間で成果に直結しやすい。
スピード 社内調整や試行錯誤で時間がかかることも多い。 豊富な知見により、初動が早く結果に結びつきやすい。
ノウハウの蓄積 自社にノウハウを残せる反面、業務プロセス改善のノウハウ自体に属人化の懸念もある。 支援後も運用を内製化しやすいよう設計されるケースが多い。
柔軟性 自社事情にあわせて柔軟に対応できる。 外部の視点で最適解を提案してくれるため、社内では気づけない盲点に気づける。
リソース確保 担当者が兼務になり、十分な時間が取れないことが多い。 専任チームが伴走するため、社内負荷を抑えられる。
リスク 試行錯誤が長引くことで成果が出ず、モチベーションが下がることもあり得る。 実績ある支援先なら、過去に成功した再現性のあるプロセスで着実に進められる。ただし、利益相反のために同業他社での成功事例を導入できない可能性がある。

以上のように、内製化にはメリットもありますが、時間・リソース・知見の壁にぶつかりやすいのも事実です。

特に「そもそも何が課題か分からない」「どこから着手すべきか悩んでいる」段階では、外部の知見を活用しながら、課題整理から始めるのが現実的なアプローチです。

まとめ

以上のように、業務プロセス改善は、すべてを社内で完結させようとすると、時間もコストも大きくかかってしまいます。

特に中小企業では、ノウハウや人材が限られているケースも多く、「改善が進まないまま現場に負担がかかり続ける」という悪循環に陥りがちです。

その点、外部の専門家による支援を活用すれば、第三者の視点で客観的に組織の構造と課題を把握でき、また、最小限の負担で現状の見える化から改善設計、最適なツール選定まで、効率的かつ実現性の高いプロセスで進めることが可能です。

「まずは、何から手をつけるべきかを整理したい」という段階でも問題ありません。

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