このページでは、業務改善・業務効率化のためにウェブアプリケーション(特にウェブアプリ)を導入する際のポイントについて解説します。
企業の業務改善・業務効率化のツールとして、PC・スマホ・タブレットのアプリケーションソフト(アプリ)が導入されることがあります。
このアプリには、大まかに分けてウェブアプリとネイティブアプリがあり、それぞれ特徴とメリット・デメリットがあります。
こうした事業用のアプリは、かつてはあらかじめ開発されたパッケージソフトしかありませんでしたが、最新では、技術の進歩により、ユーザーが手軽にウェブアプリやネイティブアプリを構築できるようになりました。
中には、ユーザーの業務に合わせて最適化・カスタマイズができるものもあることから、ウェブアプリ・ネイティブアプリは、業務改善・業務効率化の選択肢として有望視されています。
本記事では、これらのアプリのうち、ウェブアプリを使った業務改善のメリットやデメリット、そしてウェブアプリの開発手法や注意点をご紹介します。
ウェブアプリとは?ネイティブアプリとの違いは?
ウェブアプリとは
ウェブアプリは、一般に、ブラウザによりインターネット回線を通じて使用できるアプリやサービスのことです。
【意味・定義】ウェブアプリとは?
ウェブアプリとは、ウェブ技術(HTML、CSS、JavaScriptなど)を使用して開発され、ユーザーがウェブブラウザを通じて様々なプラットフォームで利用可能なアプリケーションをいう。
ウェブアプリの特徴は、ブラウザを通じてアクセスするため、インストールなどの作業が不要である点です。
なお、ブラウザではなく、アプリをインストールしたうえでインターネット回線が繋がった状態で使用するものもありますが、こちらもウェブアプリと呼ばれることがあります。
ブラウザ版とアプリ版のウェブアプリは、細かな違いがありますが、この記事では、主としてブラウザ版のものを「ウェブアプリ」といいます。
ウェブアプリとWebサービスの違いは?
ウェブアプリと似た言葉に「Webサービス」がありますが、Webサービスとウェブアプリの違いは、サービスとアプリのいずれに焦点を当てているかに違いがあります。
このため、同じアプリ・サービスであっても、ウェブアプリと呼ぶこともありますし、Webサービスと呼ぶこともあります。
ウェブアプリとWebサービスの違いは?
Webサービスとウェブアプリの違いは、Web サービスはサービスに焦点を当てた言葉であり、ウェブアプリはアプリに焦点を当てた言葉であること。
いずれも、インターネット回線を通じて使用するものであることから、ほとんど同じ意味で使われます。
ちなみに、Webサービスの「サービス」は、元々はシステム間のサービスについて表現する言葉でしたが、現在では、システム対人のサービスについても表現する言葉としても使われています。
ネイティブアプリとは
これに対して、デバイスにダウンロード・インストールして、オフラインで利用するアプリをネイティブアプリと呼びます。
【意味・定義】ネイティブアプリとは?
ネイティブアプリとは、PCやスマートフォンなどのデバイスにインストールして利用される、特定のプラットフォームに最適化されたアプリケーションをいう。
業務改善が行えるウェブアプリの具体例
ウェブアプリを活用することで、業務プロセスの合理化、生産性向上、コラボレーションの改善、および顧客対応の効率化など、多岐にわたる業務改善が実施できます。
業務改善が行えるウェブアプリの具体例
- プロジェクト管理ツール:「Trello」「Asana」
- CRMシステム:「Salesforce」「HubSpot」
- オンライン会議ツール:「Zoom」「Teams」
- ドキュメント共有ツール:「Google Drive」「OneDrive」
- 顧客サポートツール:「Zendesk」「Freshdesk」
- 電子契約サービス:「クラウドサイン」「DocuSign」
ウェブアプリとネイティブアプリの違いを比較
ウェブアプリとネイティブアプリの主な違いは、以下のとおりです。
ウェブアプリとネイティブアプリの違い | ||
---|---|---|
ウェブアプリ | ネイティブアプリ | |
アクセス方法 | URLによりブラウザ経由でアクセス・利用 | アプリストアからダウンロード・インストールして利用 |
開発言語 | マークアップ言語(HTML、XML、CSS) プログラミング言語(Java、Ruby、Python、PHP、JavaScript) |
プログラミング言語(Swift、Python、JavaScript、Dart、Kotlin、Java) |
プラットフォーム・デバイスの固有性 | クロスプラットフォーム・クロスデバイスによりプラットフォーム・デバイスに依存せず使用可能 (ただし、そのための開発に手間がかかることもある) |
特定プラットフォーム向け、OSに最適化 |
オフラインアクセス | インターネット接続が必要 | 原則としてオフラインで利用可能 |
性能とその限界 | ネイティブアプリよりも性能とその限界は低い | ウェブアプリよりも性能とその限界は高い |
更新 | アプリ提供者がによる更新が可能 | デバイスの所有者が更新する |
これらの要素を考慮のうえ、どちらを選択するかは、ユーザーが求めるUXとプロジェクトの要件次第です。
特に決定的な違いは、インターネット環境に左右される点であり、インターネット環境を恒常的かつ安定的に確保できる状態で使用するかどうかは、最も優先的に検討するべきです。
なお、業務改善が目的の場合は、クロスプラットフォームであり、柔軟性と利便性が高いため、一般的にはウェブアプリが採用されることが多いです。
【意味・定義】クロスプラットフォームとは?
クロスプラットフォームとは、異なる種類のデバイスやシステム(PCやスマートフォン)で同じアプリやソフトウェアを使えることをいう。
ウェブアプリの特徴・メリット・デメリット
ウェブアプリには、以下のような特徴、メリット、デメリットがあります。
簡単にリストにまとめましたので、ご参照ください。
ウェブアプリの4つの特徴
ウェブアプリの特徴
- インターネット環境が必須
- プラットフォーム・デバイスに依存しない
- ウェブサイトにアクセスするだけで使用可能(インストール不要)
- 新しいバージョンがリリースされた際に手動でアプリをアップデートする必要がない
ウェブアプリの3つのメリット
ウェブアプリのメリット
- OSやデバイスに関係なくアクセスができる(クロスプラットフォーム)
- 開発とメンテナンスコストがネイティブアプリに比べると安い
- リアルタイムでデータや機能の更新ができる
ウェブアプリの4つのデメリット
ウェブアプリのデメリット
- 複数のブラウザに対応した開発(クロスブラウザ)が必要
- アクセスには恒常的・安定的なインターネット環境が必要
- デバイス固有の機能(カメラやGPSなど)へのアクセスができない
- ネイティブアプリのUI/UXに比べ制約あり(オフライン利用、プッシュ通知、高度なアニメーション利用など)
業務改善をウェブアプリでおこなう際の注意点
業務改善を目的としてウェブアプリを導入する場合、以下の注意点を検討します。
業務改善をウェブアプリでおこなう際の注意点
- 開発の時間・手間
- 使用時のネット環境の要否
- セキュリティ
- データ取得・保守・バックアップ
- サーバーの用意(費用、開発、保守)
- ユーザー教育
- アプリの更新と改善
それぞれ、簡単に解説します。
注意点 1.開発にかかる時間・手間
注意点の1つめは、開発にかかる時間・手間です。
ウェブアプリの開発には時間と手間がかかります。
このため、予算を考慮したうえで、開発前に計画を立てることが重要です。
なお、ウェブアプリの開発手法も進歩・多様化しており、時間・手間・予算を抑えた開発ができる環境も整っています。
具体的には、業務用のウェブアプリであれば、ローコード開発やノーコード開発(いずれも後述)を利用することも、選択肢のひとつです。
注意点 2.使用時のネット環境の要否
注意点の2つめは、使用時のネット環境の要否です。
ウェブアプリは通常、インターネット接続が必要になります。
このため、ウェブアプリの使用は、常時安定的なインターネット環境を確保することが前提となります。
こうした特徴から、回線トラブル等により、一時的にでもオフラインになった場合に、膨大な損害・被害が想定されるような業務改善には向いていません。
逆に、多少オフラインになった場合であっても、後でリカバリーができるような業務改善であれば、それほどインターネット環境を意識する必要はありません。
なお、オフラインで使用する必要がある場合は、データの一時的な保存や同期機能を実装することは可能です。
注意点 3.セキュリティ
注意点の3つめは、セキュリティです。
一般的には、常時インターネット回線に繋がる前提のウェブアプリは、強固なセキュリティ対策が必要となります。
このため、強力なパスワードポリシーやアクセス監視の実施など適切なデータのセキュリティ対策を講じて、データの不正アクセスを防ぐ対策が重要となります。
これに対し、ネイティブアプリ、特にスタンドアローンのようなインターネット回線や他のシステムに繋がらないものは、比較的安全です。
この点から、セキュリティ対策が重要な業務改善には、ウェブアプリよりも、スタンドアローンで使用するネイティブアプリの導入を検討するべきです。
注意点 4.データの取得・保守・バックアップ
注意点の4つめは、データの取得・保守・バックアップです。
業務改善には、データを取得・保守・分析が必須であり、そのためには、データのバックアップにより損失を防ぐ必要があります。
この点につき、自社でウェブアプリを開発する場合は、バックアップは定期的に行い、データの誤消去や災害からの回復策を用意しておくと安心です。
他方で、第三者が提供するウェブアプリや開発ツールを使用する場合は、そもそもデータの取得ができなかったり、データのバックアップが保証されていないものもあります。
このため、第三者のウェブアプリ・開発ツールの採用を検討する場合は、データの取得やバックアップについても検討が必要です。
注意点 5.サーバーの用意(費用、開発、保守)
注意点の5つめは、サーバーの用意(費用、開発、保守)です。
自社でウェブアプリを開発する場合は、サーバーを用意する必要があるため、サーバーの費用、開発、保守についても、自社でする必要があります。
この場合、自社でサーバーを用意して環境を構築する「オンプレミス」による対応と、AWS、Azure、GCPなど、第三者が提供する「クラウド」による対応があります。
なお、第三者のウェブアプリ・開発ツールは、サーバーについても用意しているものがほとんどです。
このため、基幹システムやエンタープライズアプリ(事業用の大規模アプリ)でない限り、通常は、自社でサーバーの用意まではする必要はありません。
注意点 6.ユーザー教育
注意点の6つめは、ユーザー教育です。
ウェブアプリであろうとネイティブアプリであろうと、当然ながらユーザー教育は必要となります。
ただ、ウェブアプリは、ネイティブアプリに比べて性能に制約があることから、ユーザーの希望や意見を完全に取り入れることができない場合もあります。
こうした場合、ユーザー側がアプリ側に合わせる必要が出てくるため、ウェブアプリは、より教育の必要性が高くなります。
これに対し、開発費がかかっても、ユーザーの希望や意見を取り入れたネイティブアプリにより業務改善をすることで、ユーザー教育のコストを下げる方法もあります。
注意点 7.アプリの更新と改善
注意点の7つめは、アプリの更新と改善です。
業務改善の対象業務にもよりますが、ウェブアプリもネイティブアプリも、リリース後に継続的に更新・改善をおこなう必要があります。
この場合、ウェブアプリの場合は、サーバー側のアプリを更新・改善することで、その後のアクセスから自動的に更新・改善されたウェブアプリが使用できます。
他方で、ネイティブアプリの場合は、アプリ自体がそれぞれのデバイスにダウンロード・インストールされているため、それぞれのデバイスごとにわざわざ更新版のアプリをダウンロード・インストールする必要があります。
導入方法・開発方法別のウェブアプリをご紹介
具体的に業務改善にウェブアプリを導入する場合、導入方法や開発方法によって、具体的には、次のとおり、様々な選択肢があります。
5つのウェブアプリの導入方法・開発方法
- COTS(商用オフザシェルフ)アプリ
- パッケージソフト
- ローコード開発
- ノーコード開発
- スクラッチ開発
以下、これらの導入方法・開発方法とその具体例について、ブラウザ版以外のものも含めてご紹介します。
COTSアプリの導入
【意味・定義】COTSアプリとは?
COTS(商用オフザシェルフ)アプリとは、「Commercial Off-The-Shelf アプリケーション」の略で、既存の市販ソフトウェアを購入して利用するアプリケーションをいう。
COTS(商用オフザシェルフ)アプリの導入は、一般的な業務プロセス向けのソリューションです。
このため、COTSアプリは、業界を問わず、どのような事業でも発生する業務の改善に利用できます。
COTSアプリを使った業務改善内容とアプリの具体例
- 「Chatwork」「Slack」:チームコミュニケーション
- 「Sansan」:名刺管理、共有
- 「クラウドサインSCAN」:ペーパーレス化
パッケージソフトの導入
【意味・定義】パッケージソフトとは?
パッケージソフトとは、既存の市販ソフトウェアで、特定の機能や目的に合わせて設定およびカスタマイズできるアプリケーションをいう。
パッケージの導入は、特定の業界やセクター向けに設計されたカスタマイズが可能なソリューションです。
このため、業界を選ぶこととなりますが、特定の業界固有のニーズに合致した業務改善が可能です。
パッケージの具体例と業務改善内容
- 「DS-mart ERP」:企業資源計画(ERP)
- 「HUE Sales」:販売管理、分析
ローコード開発によるウェブアプリの構築
【意味・定義】ローコード開発とは?
ローコード開発とは、プログラミングスキルが少なくても、ビジュアルなツールやコンポーネントを使ってアプリケーションが作れる方法をいう。
ローコード開発で構築するウェブアプリは、プログラムスキルが限られたユーザーによるアプリ開発と改善が可能です。
このため、中程度ではありますが、個々の企業向けに最適化・カスタマイズが必要な業務プロセスに適しています。
ローコードプラットフォームの具体例と業務改善内容
- 「SmartDB」:データベース管理、分析
- 「プリザンター」:プレゼンテーション作成、共有
- 「PowerApps」:Microsoft製品連携
なお、ローコード開発につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。
ノーコード開発によるウェブアプリの構築
【意味・定義】ノーコード開発とは?
ノーコード開発とは、プログラミングせず、ノーコードツールの使用により、ビジュアルなツールやドラッグ&ドロップ等の直感的な作業によるアプリケーションやWebサービスの開発が可能な開発手法をいう。
ノーコード開発で構築するウェブアプリは、プログラムスキルが不要です。
このため、簡単な業務プロセスの改善に最適で、ビジネスユーザーが自律して改善をおこなえます。
ノーコードプラットフォームの具体例と業務改善内容
- 「Kintone」:ビジネスプロセス管理、データベース構築
- 「Anyflow」:ワークフローの自動化、管理
- 「Notion」:ノート、プロジェクト管理
- 「AppSheet」:ビジネス向けアプリ開発
なお、ノーコード開発につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。
スクラッチ開発で構築
【意味・定義】スクラッチ開発とは?
スクラッチ開発とは、既存のフレームワークやライブラリを最小限利用し、残りの部分はプログラミング、コーディングをすることにより、新しいアプリ・システム・ソフトウェアの大半の機能を自ら実装する開発手法をいう。
スクラッチ開発したウェブアプリは、高度なカスタマイズと特定の業務プロセスに合わせたソリューションを必要とする場合に適しています。
このため、最も時間・予算・手間がかかりますが、高性能なウェブアプリによる、最適化された業務改善が期待できます。
ポスクラッチ開発で構築可能な業務改善ウェブアプリの具体例
- タスク管理ツール
- 在庫管理ツール
- 予約管理ツール
なお、スクラッチ開発につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。
【構築・運用目線】ウェブアプリとネイティブアプリを比較
これらの提供方法・開発方法によるウェブアプリとネイティブアプリを比較すると、以下のとおりとなります。
ウェブアプリとネイティブアプリを比較 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
COTSアプリ | パッケージ | ローコード | ノーコード | スクラッチ開発 | ネイティブアプリ(※) | |
導入までの時間 | 短い | 短い | 短い | 短い | 長い | 長い |
カスタマイズ性 | 低い | 中程度 | 中程度 | 高い | 高い | 高い |
技術的スキル要件 | 低い | 低い | 中程度 | 低い | 高い | 高い |
費用 | 低い | 中程度 | 低い | 低い | 高い | 高い |
セキュリティ | 高い | 高い | 中程度 | 中程度 | 高い | 高い |
拡張性 | 低い | 中程度 | 高い | 高い | 高い | 高い |
(※ ネイティブアプリはスクラッチ開発によるものを想定)
この比較からわかるように、ウェブアプリの様々な提供方法や開発方法、そしてネイティブアプリには導入までの時間や費用、拡張性などの違いがあります。
このため、業務改善プロジェクトの要件に合わせて適切な手法を選択することが重要です。
まとめ
業務改善の選択肢は、アプリ・システムだけに限らず、様々な選択肢があります。
このため、何を導入するべきなのか、非常に迷う方が多いと思います。
こうした多様な選択肢のなかで、ウェブアプリは、OS、ブラウザ、デバイスを選ばない柔軟さと、低コストな開発・メンテナンスが可能な点が、業務改善に向いています。
特に、最近普及しているローコード開発やノーコード開発は、自社の業務ニーズや利用環境に合わせた調整・カスタマイズが可能でありながら、スクラッチ開発に比べて低コストで導入できます。
このため、業務改善のために初めてアプリを導入する場合や、スクラッチ開発の前段階として試作する際にも採用されています。
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