本記事では、スクラッチ開発で顧客管理(CRM)アプリ・システムを構築する場合のポイントをご紹介します。
顧客管理業務は、顧客データの収集・管理を通じて、営業やカスタマーサポートで良好な関係を築き、売上や利益を最大化するための業務です。
顧客管理業務では、顧客データを売上増加や満足度向上に繋げることが重要となります。そのためには、リピート購入や競争力向上のプロセスを最適化する必要があります。
こうした、「あるべき顧客管理業務」を実現する方法として、システム化・アプリ化による業務改善、特に開発の自由度が高いスクラッチ開発によるシステム・アプリの構築があります。
今回は、顧客管理業務をシステム化・アプリ化するメリット、スクラッチ開発での顧客管理業務の効率化・自動化について解説します。
顧客管理業務の課題と解決方法
顧客管理業務の課題
まず、顧客管理業務の課題と解決方法をみていきましょう。
顧客管理業務による顧客との関係強化、最適な製品やサービス提供は、企業の売上・利益向上に極めて重要です。
顧客管理業務は、事業規模が小さいうちは手動や表計算ソフトで対応可能ですが、規模が大きくなると限界があります。
顧客管理における一般的な課題
- 顧客データ入力の誤り・データの不整合
- 時間と労力の浪費
- 適切な情報の見落とし
- スケーラビリティの制約
- タイムラグの発生
手動管理は属人的で不正のリスクもあるため、顧客管理システム(CRM)の導入がおすすめです。
顧客管理の課題を解決するアプリ・システム
それでは、顧客管理システム(CRM)について詳しくみていきましょう。
顧客管理システムには、主に次の機能があります。
顧客管理システムの機能
- 顧客データの正確な把握
- 顧客情報の統合と管理
- 顧客対応の向上と時間短縮
- セールスプロセスの最適化
- マーケティング効果の向上
- 売上増加と利益最大化
- データ分析と報告
上記の機能は一部の具体例ですので、すべての事業でこれらの機能が必要とは限りませんし、逆にもっと機能が必要な事業もあるでしょう。
特に、顧客が一般消費者か法人かによって必要な機能は異なります。
このため、事業内容や顧客属性に応じて、必要かつ十分な機能を持つシステムを選ぶことが重要です。
アプリ・システムは事業内容や事業規模によって検討
また、高性能な顧客管理システムを導入しても、事業規模によってはコストや使用料が収益を圧迫する可能性があります。
このため、システムに「不必要な機能が無い」ことも、意外と重要となります。
そこで注目されているのが、事業規模に応じた開発が可能となるスクラッチ開発による顧客管理システム・アプリの構築です。
スクラッチ開発では、既存の業務プロセスに合わせて必要最低限の機能を持つ顧客管理アプリ・システムが作れます。
スクラッチ開発の概要
スクラッチ開発とは?
次に、スクラッチ開発の概要をご紹介します。
スクラッチ開発では、既存のフレームワークやライブラリを最小限利用しつつ、大半をプログラミングでシステムやアプリを構築します。
【意味・定義】スクラッチ開発とは?
スクラッチ開発とは、既存のフレームワークやライブラリを最小限利用し、残りの部分はプログラミング、コーディングをすることにより、新しいアプリ・システム・ソフトウェアの大半の機能を自ら実装する開発手法をいう。
スクラッチ開発に向いているアプリの具体例
フルスクラッチ開発は、以下のアプリ開発に向いています。
スクラッチ開発に向いているアプリの具体例
- 細部までこだわったアプリ
- サーバーもプログラムも全て自社内で管理するアプリ
- 大規模システムの代わりになるアプリ
フルスクラッチ開発とは?
これに対し、似たような表現に「フルスクラッチ開発」があります。
フルスクラッチ開発は、スクラッチ開発とはことなり、既存のフレームワークやライブラリなどを一切使わずに、一からすべてプログラミング・コーディングをして開発する手法となります。
【意味・定義】フルスクラッチ開発とは?
フルスクラッチ開発とは、システム構築やアプリ開発において、一からすべてプログラミング・コーディングして開発をする手法をいう。
当然ながら、スクラッチ開発に比べると開発費や手間がかかりますが、反面、自由度は最も高くなります。
フルスクラッチ開発は、極めて大規模なエンタープライズシステムや基幹システムなどで採用される開発手法です。
スクラッチ開発で顧客管理をシステム・アプリ化するメリット
顧客管理システム・アプリをスクラッチ開発するメリットは、以下のとおりです。
スクラッチ開発で顧客管理システム・アプリを構築するメリット
- メリット1. 開発の自由度が高い
- メリット2. ニーズや要件に合わせてフルカスタマイズ可能
- メリット3. 他のシステムとの連携が容易
- メリット4. 機能追加・保守に柔軟に対応可能
- メリット5. コストの長期的な削減も可能
以下、各メリットを詳しくみていきましょう。
メリット1. 開発の自由度が高い
顧客管理システム・アプリをスクラッチ開発するメリットの1つ目は、開発の自由度が高い点です。
スクラッチ開発は、アプリのデザインや挙動・機能に至るまで、すべて細かく設定できるます。
このため、それぞれの企業独自の顧客管理業務に最適化した顧客管理システム・アプリの構築に最適です。
この点は、他の開発手法(パッケージ開発・ノーコード開発・ローコード開発)や、パッケージソフト・システムにはない、スクラッチ開発の最大のメリットです。
メリット2. ニーズや要件に合わせてフルカスタマイズ可能
顧客管理システム・アプリをスクラッチ開発するメリットの2つ目は、ニーズや要件に合わせてフルカスタマイズ可能な点です。
メリット1とも関連しますが、自由な開発ができるスクラッチ開発は、技術さえあれば、ユーザーのニーズや要件に合わせられます。
開発途中や実装後にニーズや要件が変わった場合も同様なため、複雑かつ特殊な顧客管理(CRM)システムには、スクラッチ開発が向いています。
ただし、あまりにも複雑・特殊な開発になる場合は、それだけ多くの開発費用や時間がかかりますので、注意が必要です。
メリット3. 他のシステムとの連携が容易
顧客管理システム・アプリをスクラッチ開発するメリットの3つ目は、他のシステムとの連携が容易な点です。
既存のツールやシステムとデータを自動連携させることで、業務効率の向上や情報管理の一元化が実現します。
例えば、顧客管理システム・アプリは、以下のツールやシステムと連携させることができます。
連携すると便利な既存ツール・システム
- ERP
- 会計ソフト
- 在庫管理システム
こうした連携により、手作業によるミスや時間のロスが減り、大幅な業務改善や効率化が期待できます。
メリット4. 機能追加・保守に柔軟に対応可能
顧客管理をスクラッチ開発するメリットの4つ目は、機能追加・保守に柔軟に対応可能な点です。
スクラッチ開発は、開発の自由度が高いため、システム・アプリが完成した後であっても、機能の追加ができます(追加しやすい開発ができます)。
これは、完成後のシステム・アプリの保守についても同様で、スクラッチ開発の場合は、保守業務に関しても仕様変更がしやすいシステム・アプリとすることもできます。
このため、システム・アプリの開発完了後、実装後の機能追加や保守の際にも、開発範囲を限定することなく、柔軟に仕様の変更ができます。
特に、日々の営業活動に直結する顧客管理の業務は、長期間中断することはできません。
この点からも、顧客管理システム・アプリは、途中で停止することなく、稼働中に機能追加や保守ができるように開発することが重要となります。
メリット5. コストの長期的な削減も可能
顧客管理をスクラッチ開発するメリットの5つ目は、コストの長期的な削減も可能な点です。
スクラッチ開発は、他の開発手法に比べて、短期的には開発費用が高くなる傾向があります。
他方で、ライセンス料やサブスクリプション費用などのランニングコストについては、比較的低く抑えることができます。
このため、時間が経つほどコストメリットが大きくなります。
一般的な顧客管理(CRM)アプリ・システムの機能
一般的な顧客管理アプリ・システムに含まれている機能を詳しく紹介します。
一般的な顧客管理アプリ・システムの機能 |
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顧客情報の一元管理 | 顧客の名前、連絡先、住所、購入履歴などの基本的な情報を管理 |
リード管理 | 見込み客(リード)を追跡・管理し、潜在顧客に関する情報を蓄積 |
販売・取引管理 | 販売プロセスの進捗を追跡し、取引のステータスを管理 |
コミュニケーション履歴の管理 | 顧客とのメール、電話、チャットなどのコミュニケーション履歴を管理 |
タスク・スケジュール管理 | 営業活動やフォローアップのタスク、スケジュールを管理 |
レポートと分析 | 販売パフォーマンスや顧客の行動データを分析するレポートを自動生成 |
メールマーケティングとの連携 | ターゲットマーケティングを行うメールを顧客リストを使って送信 |
サポート・カスタマーサービス管理 | 顧客からの問い合わせやサポートリクエストを管理 |
当然ながら、顧客管理(CRM)システム・アプリには、これらの機能をすべて実装する必要はありません。
これらのうち、必要な機能だけを実装できるのが、スクラッチ開発の強みになります。
スクラッチで実装したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能
一般的な顧客管理(CRM)アプリ・システムに含まれている機能の他にも、スクラッチで実装すると便利な独自機能も多く存在します。
スクラッチで実装したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能
- 機能1. カスタマイズされた顧客データフィールド
- 機能2. 高度なデータ連携機能
- 機能3. 自動カスタマーサービス
- 機能4. 顧客行動予測機能
- 機能5. 顧客満足度スコアの追跡
以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
機能1. カスタマイズされた顧客データフィールド
スクラッチで開発したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能の1つ目は、カスタマイズされた顧客データフィールドです。
ここでいう「顧客データフィールド」とは、業界やビジネス特有の顧客情報を詳細に管理できるフィールドのことです。
具体的には、製品使用状況、カスタムプロファイルデータなどが該当します。
顧客管理(CRM)アプリ・システムにこうした顧客データフィールドを追加することで、顧客ごとのニーズに合わせやすくなります。
カスタマイズされた顧客データフィールドの具体例
製造業
顧客ごとの使用状況を把握するため「製品の使用年数」や「導入環境」などのフィールドを追加
営業担当者は顧客がどの製品をどのくらい使っているかを把握し、適切なタイミングでメンテナンスや新製品の提案が行える
機能2. 高度なデータ連携機能
スクラッチで開発したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能の2つ目は、高度なデータ連携機能です。
すでに触れたとおり、スクラッチ開発で顧客管理(CRM)アプリ・システムを構築した場合、他のシステム(ERP、会計ソフト、在庫管理システム)との連携ができます。
他のシステムと連携することで、すべてのシステム間でリアルタイムにデータを同期できるようになります。
その結果、業務の効率化やデータ管理の一元化が可能になり、情報の整合性を保ちやすくなります。
高度なデータ連携の具体例
販売データや在庫情報
営業担当者は、在庫状況をリアルタイムで確認しながら即座に顧客に提案を行える
機能3. 自動カスタマーサービス
スクラッチで開発したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能の3つ目は、自動カスタマーサービスです。
顧客管理(CRM)アプリ・システムをスクラッチ開発で構築した場合、AIやチャットボットなどの自動化を支援する機能を実装することもできます。
こうしたAIやチャットボットは、顧客からの問い合わせに自動で即時対応することもできます。
これにより、スタッフの対応工数や負荷の軽減を図り、顧客満足度の向上や人手不足にも貢献します。
自動カスタマーサービスの具体例
Eコマース企業
FAQ(よくある質問)などの顧客サポートでチャットボットが自動応答し、必要に応じて担当者へエスカレーションを行う
機能4. 顧客行動予測機能
スクラッチで開発したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能の4つ目は、顧客行動予測機能です。
顧客管理(CRM)アプリ・システムをスクラッチ開発で構築する場合、過去のデータ(顧客の購買行動や問い合わせ履歴)から、次に必要となる商品やサービスを予測できるようになります。
また、こうした予測にもとづき、次の行動について提案してもらえる機能も実装できます。
これにより、クロスセルやアップセルの機会を増加させ、結果として、売上の向上に繋がります。
顧客行動予測機能の具体例
小売業者
消耗品を定期的に購買する顧客の購入サイクルに則ってリマインダーを自動送信することで、リピート購入の促進が容易になり、顧客離れを防ぐことが可能
機能5. 顧客満足度スコアの追跡
スクラッチで開発したい顧客管理(CRM)アプリ・システムの独自機能の5つ目は、顧客満足度スコアの追跡です。
E顧客管理(CRM)アプリ・システムをスクラッチ開発で構築する場合、特定の行動(商品購入後のフォローアップなど)について、顧客ごとの満足度をスコア化・数値化することもできます。
また、このスコア・数値は、リアルタイムで追跡・把握することもできます。
このため、常に顧客満足度を正確に把握することで、迅速に必要な対応や改善策を講じることができます。
顧客満足度スコアの追跡の具体例
サービス業
定期的に顧客アンケートを実施し、満足度スコアをシステムで管理
満足度が低い顧客にはフォローアップメールを自動送信するなど、特別なサービスを提供するトリガーを設定
スクラッチで顧客管理(CRM)アプリ・システムを構築する際のポイント
スクラッチで顧客管理アプリ・システムを構築するポイント
- ポイント1. 必要な機能の明確化
- ポイント2. 運用・保守にかかる費用の把握
ポイント1. 必要な機能の明確化
スクラッチ開発で顧客管理(CRM)アプリ・システムを構築するポイントの1つ目は、必要な機能の明確化です。
スクラッチ開発は、自由度が高いというメリットがありますが、逆に不必要な機能まで開発・実装ができる、というデメリットもあります。
すでに述べたとおり、こうした不必要な機能は、無駄な開発費用や維持費用、リソースの無駄使いの原因となります。
このため、顧客管理(CRM)アプリ・システムをスクラッチ開発で構築する場合は、本当に必要な機能を見極め、機能の過不足を防ぐことによる業務効率化が重要となります。
これにより、短期的にも長期的にも無駄な開発費用や機能の複雑化を避け、また、使いやすいシステムを構築できます。
ポイント2. 運用・保守にかかる費用の把握
スクラッチ開発で顧客管理(CRM)アプリ・システムを構築するポイントの2つ目は、運用・保守にかかる費用の把握です。
スクラッチ開発は、開発が完了したらそこで終了ではなく、多かれ少なかれ、運用・保守の業務も必要となります(ただし、程度の差はありますが、他の開発手法でも同様です)。
このため、当初の開発費用だけでなく、システムのアップデートや問題解決にかかる長期的な運用コストについて、事前にある程度予測しておくことも重要となります。
ただし、運用・保守の費用は、正確に予測することが困難であることが多いため、開発会社とよく打ち合わせをしておくことも必要となります。
スクラッチ開発以外の開発手法
システム・アプリの開発には、スクラッチ開発以外にも、「パッケージ開発」や「ローコード・ノーコード開発」などの開発手法があるので、簡単にご紹介します。
「スクラッチ」「ローコード・ノーコード」「パッケージ」各開発手法の比較 | |||
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スクラッチ開発 | ローコード・ノーコード開発 | パッケージ開発 | |
特徴 |
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メリット |
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デメリット |
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特に、ローコード・ノーコード開発は、「スクラッチ開発に比べて約2倍の生産性」と言われています(あくまで仮見積の結果として)。
構築したいアプリ・システムによっては、スクラッチ開発以外の手法を選択するのもよいかもしれません。
まとめ
既存の業務プロセスに適した顧客管理システムの導入は、正確かつ効率的な情報管理を実現し、顧客満足度向上や売上・利益の増大に繋がります。
しかし選択によっては顧客対応の遅延や作業効率の悪化、費用対効果の問題が生じる可能性もあります。
こうしたリスク・課題に対応する方法として挙げられるのが、スクラッチ開発を活用した顧客管理(CRM)アプリ・システムの構築です。
スクラッチ開発は従来の顧客管理に合わせてシステムを自由に構築できるので、自社の業務フローに最適な顧客管理システムの導入を考えている方にはおすすめです。
当社では、こうしたスクラッチ開発やローコード・ノーコード開発による業務アプリ・業務システムの開発会社の選定をサポートしております。
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