このページでは、アプリ開発の発注担当者、特に初心者の方向けに、アプリ開発業者の選び方について、簡単にわかりやすく説明しています。
アプリ開発を検討する場合、自社に開発部門がなければ外部にアプリ開発を依頼をすることとなります。
この際、アプリ開発の業者もたくさんあり、「どうやって選べばいいか分からない…」「何を基準に選べばいいの…」、等々お悩みも多いかと思います。
アプリ開発の業者選定の過程は、おおむね以下の3段階となります。
アプリ開発業者を選ぶ3段階
- 1段階目:見積り候補のリストアップ
- 2段階目:見積り取得・比較検討・相見積り候補の選定
- 3段階目:発注先の選定(このページの内容)
このページでは、3段階めの「発注先の選定」の過程について紹介します。
段階を分けてアプリ開発の業者を検討してみることで、業者をよく理解し納得した業者選びに繋がります。
それでは、アプリ開発業者の選び方について以下の記事で細かく見ていきましょう。
アプリ開発業者は3段階で絞り込む
アプリ開発業者の選定方法とは?
アプリ開発の業者選定をするときは、通常は特定の業者を指名するのではなく、複数の業者のなかから、次の3段階を経て、1社を選定します。
アプリ開発業者を選ぶ3段階
- 1段階目:見積り候補のリストアップ
- 2段階目:見積り取得・比較検討・相見積り候補の選定
- 3段階目:発注先の選定(このページの内容)
アプリ開発業者を、段階を分けずにいきなり選定する方法もあります。
しかし、アプリ開発の発注をしたことがない方や、まだ慣れていない方には、アプリ開発業者をいきなり選定するのはオススメできません。
というのも、アプリ業者をする際に、重要な選定項目について抜けや漏れが無いように選定しないと、良い業者選びに繋がらないからです。
1段階目:見積り候補のリストアップ
まず1段階目は、見積りを取得する候補のアプリ開発業者をいくつかリストアップします。
この段階での詳細な解説は、以下のページをご覧ください。
2段階目:見積り取得・比較検討・相見積り候補の選定
1段階目で選定した業者に、打ち合わせを申し込み、見積書を取得します。
この段階での詳細な解説は、以下のページをご覧ください。
3段階目:発注先の選定
3段階目の発注先の選定では、取得した見積書や打ち合わせで話した情報を比較し、いよいよ発注先を決断します。
この段階では、開発を一緒に進めていくのに信頼できる業者なのか?自社アプリを実現できるのか?を見極めていきます。
2段階目で見積り取得の面談・オンラインミーティングをした場合に、そこで聞き逃してしまったことや後から質問が出てきたときは、遠慮なくコンタクトをとりましょう。
また、必要に応じて、打ち合わせを依頼します。
それでは、「3段階目:発注先の選定」について以下で詳しく説明していきます。
アプリ開発業者の比較検討(相見積り)の判定基準・選び方
アプリ開発業者の相見積りの4つの判定基準
複数の業者から取得した見積書を比較し、以下4つの判定基準をもとに検討します。
アプリ開発業者の比較検討(相見積り)の4つの判定基準
-
- 選定基準1:見積書が見やすい
- 選定基準2:業務内容と料金の費用対効果に納得できるか
- 選定基準3:打ち合わせの内容が反映されている
- 選定基準4:想定の開発期間内で終わるよう見積もられているか
選定基準1:見積書が見やすい
選定基準の1つ目は、見積書が見やすいかどうかです。
見積書が一目見てわかりにくいというのは、相手に理解してもらうことを想定して書かれていません。
アプリ開発後の仕様書や説明書などにも業者の提出書類のレベルとして不安が残ります。
判断基準は、見積書を上から下まで見て、「どこに何が書いてあるかわかる」「見積書に理解できない項目がない」ことです。
選定基準2:業務内容と料金の費用対効果に納得できるか
選定基準の2つ目は、業務内容と料金の費用対効果に納得できるかです。
見積書が出てくると値段だけに目がいきがちです。
しかし、値段だけを見てしまうと、「(予算内で)良いアプリを開発する」という本来の目的を見逃してしまいます。
業務内容に対する料金設定が納得できるかは、打ち合わせでの業者からの提案を見返し、他社の見積書と相場も比べて判断しましょう。
選定基準3:打ち合わせの内容が反映されている
選定基準の3つ目は、打ち合わせの内容が反映されているかです。
打ち合わせでの内容に抜け漏れがないかを見積書と打ち合わせでのメモを見比べます。
内容が反映されていない、または知らない項目がある場合、打ち合わせ中に聞き逃していたか、または事前説明がなかったかのどちらかです。
こうした抜け・漏れを業者に問い合わせたうえで、見積内容に変更がないかどうかを確認します。
不明点が多い場合は、改めて見積書に関する打ち合わせの依頼をするのも良いでしょう。
選定基準4:想定の開発期間内で終わるよう見積もられているか
選定基準の4つ目は、想定の開発期間内で終わるよう見積もられているかです。
納期を短く設定している場合は、特に確認が必要です。
アプリ開発業界では、業者側の定める想定開発期間より短納期だと、料金が高くなりやすいです。
にもかかわらず、他社と比べてあまりにも安く設定していたりする場合は、業者側に「納期は考慮されているか」「納期が考慮されている場合は、なぜ安くできるのか」を確認しましょう。
発注先との相性を検討する判定基準
発注先や見積書を比較検討したら、自社と業者との相性も検討します。
どんな業者が相性が良いかは人によって違いますが、以下の点は開発を円滑に進められる業者のポイントです。
発注先を検討する2つの判定基準
- 判定基準1:コミュニケーションが円滑に取れるか
- 判定基準2:自社の意図を汲んでくれるか
判定基準1:コミュニケーションが円滑に取れるか
判定基準1つ目は、コミュニケーションが円滑に取れるかです。
コミュニケーションが円滑かをチェックするポイントは以下の通りです。
コミュニケーションが円滑かをチェックするポイント
- お問い合わせ以降のやりとりで、担当者や業者からの連絡が2営業日以内に返答があった
- 打ち合わせで話しやすい担当者やチームだったか
- こちらが理解できるように話をしてくれる業者だったか
- 定期的な打ち合わせを設定しているか
上記は全て、発注後の開発でも重要なポイントです。
コミュニケーションが円滑に取れない場合に、「質問しても連絡がつかない」「開発進捗がわからない」「開発内容を説明されても理解できない」などが懸念されます。
判定基準2:自社の意図を汲んでくれるか
判定基準2つ目は、自社の意図を汲んでくれるかです。
打ち合わせでも自社の事情やアプリ開発の目的を理解してくれていたかも重要です。
ただ開発を請け負うのではなく、一緒に開発を進めてくれる業者を選ぶ方が開発も進めやすく成功に近づきます。
以上の2つの判定基準以外にも、自社で気にして欲しいポイントがあれば独自の判定基準として設定してください。
発注先の決定
見積書の比較(相見積り)と発注先業者の判定を検討したら、比較した情報を元に発注先を決定します。
比較時に追加で聞いてみたいことやわからないところがあれば、業者に確認してみます。
発注先を決定したら、業者に発注意思を連絡し、今後の段取りも提示してもらいます。
一般的な開発開始までの流れは以下の通りです。
発注先決定後の開発開始までの流れ
- 発注先に発注意思の連絡
- 契約に関する事前打ち合わせ
- 契約書の取り交わし
- 開発開始
契約締結の流れ
アプリ開発は「アプリ開発そのものの契約の締結」と「秘密保持契約(NDA)の締結」(またはこれらがまとまった契約の締結)を経てスタートします。
アプリ開発の契約の締結
アプリ開発に関する全ての内容についての契約を締結します。
アプリ開発の契約書は、開発中や開発後にも非常に重要で、認識の違いが起きないよう細部まで記載されているものです。
このため、アプリ開発の契約書は、内容が非常に多い、という特徴があります。
逆に言えば、発注書1枚だけで開発に着手しようとする業者であった場合は、業者の選定をやり直した方が良いです。
秘密保持契約(NDA)の締結
秘密保持契約(NDA)は、自社の企画やノウハウなどの情報を業者に提供する際に、他業者を含む第三者に漏らしたり、不正に利用されたりすることを防止するために、情報管理の方法や禁止事項等について取り決める契約のことです。
【意味・定義】秘密保持契約(NDA)とは?
秘密保持契約(NDA)は、自社の秘密情報を業者に提供する際に、他業者を含む第三者に漏らしたり不正に利用されたりすることを防止するための契約をいう。
開発予定のアプリの企画などが外部に漏れてしまうと、大きな損失となります。
こうした情報は、事業の存続にも関わるものですので、秘密保持契約(NDA)も締結します。
アプリ開発の契約書で確認するべき5つのポイント
契約書が送られてきたら、以下のポイントを確認します。
アプリ開発の契約書で確認するべき5つのポイント
- ポイント1:支払金額や支払方法
- ポイント2:実施する業務内容
- ポイント3:作業報告の時期や方法
- ポイント4:トラブルが起きたときの対応について
- ポイント5:知的財産権がどちらに帰属するか
ポイント1:支払金額や支払方法
契約書で確認するべきポイントの1つ目は、支払金額や支払方法です。
「誰が」「誰に」「いつ」「いくら払うのか」「どのように払うのか」が明記されている必要があります。
アプリ開発を例に当てはめると以下のようになります。
支払いの確認ポイント | 記載例 |
---|---|
誰が | ○○会社(発注をする側) |
誰に | △△会社(発注するアプリ開発業者) |
いつ | ○年○月○日 |
いくら払うのか | 開発総額円(税抜) |
どのように払うのか | △△会社の銀行口座に振り込み |
ポイント2:実施する作業内容
契約書で確認するべきポイントの2つ目は、実施する業務内容です。
業務内容は、開発を依頼する範囲と合致するか確認します。
業務内容、特に仕様については、アプリ開発の契約において最も重要な契約条項です。
このため、開発を予定しているアプリと違っていないかどうか、よく確認してください。
ポイント3:作業報告の時期や方法
契約書で確認するべきポイントの3つ目は、作業報告の時期や方法です。
作業報告は、特に決まった方法や時期はありません(民法上は準委任契約の場合は一定のルールがあります)。
報告の頻度、報告内容、報告方法(メール、形式書類、打ち合わせ等々)を確認します。
ポイント4:トラブルが起きたときの対応について
契約書で確認するべきポイントの4つ目は、トラブルが起きたときの対応についてです。
万が一、作業中にトラブルが発生しそうな場合は、発注側と業者と協力して解決にあたることとなります。
しかし、発注側が協力に当たらない、業者が原因究明をしない、など協力関係が築けない場合に損害賠償責任に発展する可能性もあります。
このため、事前にトラブルがあった場合に備えた内容になっているのかを確認します。
ポイント5:知的財産権がどちらに帰属するか
契約書で確認するべきポイントの5つ目は、知的財産権についてです。
アプリ開発では、主にプログラムの著作権が発生します。
この著作権の処理・帰属には、主に以下の3つの方法があります。
アプリ開発における著作権の処理方法
- 譲渡方式:アプリ開発業者から発注者へ譲渡する方法
- ライセンス方式:アプリ開発業者に留保しつつ発注者に利用を許諾する方法
- ハイブリッド方式:汎用的なプログラムの著作権はライセンス方式とし、そのアプリの開発のために独自に作成したプログラムは譲渡方式とする方法
アプリ開発の発注を経験したことがない方は、譲渡方式が当然と思いがちです。
しかし、実際のアプリ開発の現場では、すべての著作権が発注者に譲渡されることは現実的ではありません。
このため、アプリ開発の契約では、ハイブリッド方式とすることが多いです。
秘密保持契約書(NDA)で確認するべき4つのポイント
秘密保持契約書(NDA)で確認するべきポイントは以下の4つです。
秘密保持契約書(NDA)で確認するべき4つのポイント
- ポイント1:契約の目的
- ポイント2:秘密情報の定義と例外
- ポイント3:秘密保持義務と例外
- ポイント4:秘密情報を開示できる人の範囲
- ポイント5:秘密保持義務の継続期間
ポイント1:契約の目的
秘密保持契約書(NDA)で確認するべきポイント1つ目は、契約の目的についてです。
秘密保持契約は、秘密情報の開示・漏えいを防ぐためと、目的外での使用を禁止するためにあります。
この目的外使用の禁止に該当するかどうかは、「目的」が明確になっていなければなりません。
このため、契約の目的が、今回のアプリ開発の範囲で使われることを想定して書かれているか確認が必要です。
ポイント2:秘密情報の定義と例外
秘密情報の定義とは?
秘密保持契約書(NDA)で確認するべきポイント2つ目は、秘密情報の定義と例外についてです。
秘密情報の定義とは、どのような情報が秘密情報に該当するのかを指します。
アプリ開発では、通常は、アプリ開発の企画や契約書、取引に関する内容などを含めて、発注者がアプリ開発業者に提供する情報については、すべて秘密情報とします。
秘密情報の定義の例外とは?
ただ、発注者から提供された情報をすべて秘密情報とすると、秘密保持義務が非常に厳しくなります。
このため、通常は、秘密情報について、以下のような例外を設定します。
秘密情報の例外
- 公知情報:開示された時点で公知となっている情報。
- 公開情報:契約期間中に契約当事者の責任によらずに公開された情報。
- 保有情報:開示された時点で契約当事者が保有していた情報。
- 第三者取得情報:契約期間中に契約当事者が第三者から秘密保持義務を課されず開示を受けた情報。
- 独自開発情報:契約期間中に契約当事者が相手方から開示を受けた情報によらずに開発した情報。
ポイント3:秘密保持義務と例外
秘密保持契約書(NDA)で確認するべきポイント3つ目は、秘密保持義務と例外についてです。
秘密保持契約では、当然ながら、秘密保持義務が課されます。
他方で、法令等にもとづき、第三者に秘密情報の開示を求められる場合もあります。
このため、一般的な秘密保持契約では、以下の場合に、例外として、秘密情報の開示ができるようにします。
秘密保持義務の例外となる場合
- 行政期間からの情報開示に関する命令等があった場合
- 裁判所から情報開示に関する命令等があった場合
ポイント4:秘密情報を開示できる人の範囲
秘密情報は原則として誰にも開示してはいけない
秘密保持契約書(NDA)で確認するべきポイント4つ目は、秘密保持の義務を負う人と例外についてです。
秘密保持義務を負う当事者は、理論上は法人であるアプリ開発業者となります(個人事業者の場合は本人)。
このため、たとえその会社の役員や従業員であっても、契約当事者でない第三者ということになります。
このため、秘密情報を誰が開示を受け、使用していいのかを規定します。
秘密情報を開示できる第三者の具体例
一般的なアプリ開発の契約では、以下の人に対して秘密情報を開示できるようにします。
秘密情報を開示できる第三者
- 役員・従業員
- 再委託先(とその役員・従業員)
- 外部の専門家
- 行政機関・裁判所
この他、アプリ開発業者が上場企業である場合は、金融商品取引所、投資家などに対して開示できるようにする場合もあります。
なお、発注者としては、特にアプリ開発業者の役員・従業員、再委託先などに対する「秘密保持義務を課す義務」も課しておく必要があります。
ポイント5:秘密保持義務の継続期間
秘密保持契約書(NDA)で確認するべきポイント5つ目は、秘密保持の義務の継続期間についてです。
秘密保持契約では、契約の有効期限を定めることが多いです。
定めるポイントは、いつから秘密保持契約が始まり、いつを持って契約期間終了とするのか、です。
アプリ開発の相見積もりに関するよくある質問
- アプリ開発業者の相見積りをする場合における比較検討の基準を教えてください。
- アプリ開発業者の相見積りでは、以下の4つの判定基準にもとづき検討します。
- 選定基準1:見積書が見やすい
- 選定基準2:業務内容と料金の費用対効果に納得できるか
- 選定基準3:打ち合わせの内容が反映されている
- 選定基準4:想定の開発期間内で終わるよう見積もられているか
- アプリ開発業者との相性についての基準を教えてください。
- アプリ開発業者との相性を判断する際には、以下の2つの基準にもとづき検討します。
- 判定基準1:コミュニケーションが円滑に取れるか
- 判定基準2:自社の意図を汲んでくれるか
- アプリ開発の契約書で確認するべきポイントについて教えてください。
- アプリ開発の契約書では、主に次の5つの内容を確認します。
- ポイント1:支払金額や支払方法
- ポイント2:実施する業務内容
- ポイント3:作業報告の時期や方法
- ポイント4:トラブルが起きたときの対応について
- ポイント5:知的財産権がどちらに帰属するか
- 秘密保持契約(NDA)で確認するべきポイントについて教えてください。
- 秘密保持契約(NDA)では、主に次の5つのものを確認します。
- ポイント1:契約の目的
- ポイント2:秘密情報の定義と例外
- ポイント3:秘密保持義務と例外
- ポイント4:秘密情報を開示できる人の範囲
- ポイント5:秘密保持義務の継続期間