中小企業の業務改善の実践的・具体的方法や事例を5ステップで解説

業務改善を進めたいけれど、具体的な方法が分からない」――そんな悩みを抱える中小企業の管理職は少なくありません。

書類の転記や二重入力、担当者に依存した属人化など、現場の非効率は分かっていても、ITや専門知識がなければ「どんな改善方法を取ればよいのか」が見えにくいのが実情です。

本記事では、業務改善の基本的な方法を5つのステップで解説し、現場で役立つフレームワークや導入しやすいツール・サービスも紹介します。

「業務改善ってどうやって進めればいいのか?」という疑問に答え、読み進めるうちに自社に合った最適な方法がきっと見つかるはずです。

業務改善とは?現場が変わる第一歩をわかりやすく解説

まずは業務改善の概要についてみていきましょう。

ここでは、そもそも「業務改善」とは何か、その意味と(特に)中小企業における必要性を整理します。まず基礎を押さえることで、後のステップやフレームワークを理解しやすくなります。

業務改善の意味とは?定義と目的をやさしく解説

【意味・定義】業務改善とは?

業務改善とは、業務の「ムダ・ムラ・ムリ」や課題を見つけ出し、効率化や品質向上を図ることで、生産性や成果を高める取り組みをいう。

その第一歩は「なぜこの作業が必要なのか?」という根本的な問いかけから始まります。

なお、業務改善そのものの解説につきましては、詳しくは以下の記事をご覧ください。

業務改善とは?中小企業の現場が抱える課題と成果につなげる進め方

なぜ今、業務改善が重要なのか?中小企業が抱える課題とは

近年、多くの中小企業が「人手不足なのに業務量は増える一方」「新しい働き方に対応したいが、社内体制が追いつかない」といった課題に直面しています。

業務改善は、こうした構造的な問題を解決し、企業が変化の激しい時代を生き抜くために欠かせない取り組みなのです。

業務改善の効果と具体的なメリット
効果 具体的なメリット
生産性・競争力 限られた資源最大の成果を出す
  • 人手不足の解消
  • コスト削減
  • より付加価値の高い業務への集中
  • 企業の市場競争力向上
働きがい・組織 従業員のモチベーション向上と定着
  • 単純作業によるストレスの軽減
  • 創造的な仕事に集中できる環境
  • 従業員満足度とエンゲージメントの向上
  • 離職率の低下
時代への適応 変化に柔軟に対応できる組織文化
  • 新しい技術やツールを導入できる土俵づくり
  • リモートワークなどたような働き方への対応
  • VUCA時代における変化への対応力強化

【5ステップ】業務改善の正しい進め方|現場で実践できる方法と手順

次に、業務改善を段階的に進めるための基本ステップを紹介します。

業務改善を進める際に「何から手をつければいいのか」が分からない方のために、現場で実践しやすい5つのステップを紹介します。

「どこから手をつければいいのか分からない」という管理職の方でも、以下のステップにもとづき順を追って整理すれば改善の糸口を掴めます。

【5ステップ】業務改善の正しい進め方
内容 目的
ステップ1. 業務の現状を「見える化」する 現状業務を明らかにする 問題の把握
ステップ2. 課題の「優先順位」をつける 改善すべき業務を絞る 効率的に成果を出す
ステップ3. ムダ・ムラ・ムリの「洗い出し」をする 非効率の原因を特定 効果的な改善につなげる
ステップ4. 改善策を「実行」する 改善案の導入・運用 実務に反映させる
ステップ5. 効果の「検証」をし、次に繋げる 効果を測り次に活かす 継続的な改善サイクル

ステップ1. 業務の現状を「見える化」する

業務改善の正しい進め方のステップ1は、業務の現状の「見える化」です。

業務改善は、まず現状を正しく把握することから始まります。

「いま何が起きているのか」を可視化することで、普段は当たり前に行っている作業の中に潜む非効率や無駄を明らかにできます。

「見える化」でやること・ポイント
  • やること:業務を洗い出し、担当者・手順・所要時間を整理して図解する。
  • ポイント:理想像ではなく実際の業務をヒアリングや実測で正しく描く。
「見える化」の具体的な方法
業務の棚卸し
  • 現在行われている全ての業務をリストアップする
  • 各業務について、「誰が」「何を」「いつ」「どのように」行っているのかを詳細に把握し、種類、量、難易度、所要時間、必要なスキル、発生頻度といった要素を具体的に洗い出す
業務フローの可視化
  • 業務フロー図、フローチャート、スイムレーン図、業務手順書など、様々なツールを用いて業務の流れを視覚的に表現する
  • 重要なのは、理想像ではなく、実際の現状を正確に描写すること
  • 各作業にかかる時間の実測や、担当者への詳細なヒアリングを通じて、現場のリアルな状況を把握
業務シナリオの作成
  • 各業務フローについて、「誰が」「何のために」「どうやって」業務を行っているのかを整理し、大まかなシナリオとして記述する
「見える化」の具体例:中小製造業
  • 営業部門の業務を1週間かけてヒヤリングと観察で可視化
  • その結果、見積書作成のプロセスに「手書き→Excel入力→印刷→押印→スキャン→メール添付」という非効率な流れがあることが判明

ステップ2. 課題の「優先順位」をつける

業務改善の正しい進め方のステップ2は、課題に「優先順位」をつけるです。

現状が可視化され、多くの問題点が洗い出されたら、それらに優先順位をつけましょう。

すべての課題を一度に解決しようとするとリソースが分散し、かえって非効率になります。

最も効果が大きく、実現可能性の高いものから取り組むことが重要です。

「優先順位」でやること・ポイント
  • やること:インパクト×緊急度のマトリクスで整理し、費用や人員も考慮して優先度を決める。
  • ポイント:一度に全てを解決せず、最小リソースで最大効果を狙う。
「優先順位」設定の具体的な方法
インパクト×緊急度のマトリクスを使う
  • 改善による効果の大きさ(インパクト)と、対応の必要性(緊急度)をマトリクスにして、優先順位を決める
  • 優先すべきは「インパクト大・緊急度高」の領域
  • 課題ごとに「改善した場合にどれだけ業務に効果があるか」「放置した場合のリスクがどれだけ大きいか」を定量的に整理する
  • マトリクスに可視化することで、関係者が同じ基準で議論でき、感覚的な優先付けを避けられる
  • 中長期で効果が出る施策も見落とさずに、バランスを取る意識が必要
コストとリソースの観点を入れる
  • 改善にかかる時間や費用、必要な人員も考慮し、実行可能な範囲を見極める
  • 改善に必要な「初期投資」「運用コスト」「人的リソース」を一覧化し、リソース制約を明確にする
  • 小さな負担で大きな効果を得られる「費用対効果の高い改善」から優先すると実行性が高い
  • 大規模な改善は段階的に分割し、短期施策と長期施策を併用することで現実的な計画に落とし込める
「優先順位」設定の具体例:中小製造業
  • 「見積書作成の非効率さ」は営業担当者の1日あたり30分以上のロスにつながっていたため、インパクトが大きいと判断
  • まずここから着手することで決定

ステップ3. ムダ・ムラ・ムリの「洗い出し」をする

業務改善の正しい進め方のステップ3は、ムダ・ムラ・ムリの「洗い出し」です。

業務の中に潜む「ムダ・ムラ・ムリ」を明確にするためのステップです。

たとえば、形式だけで続いている業務や、目的が曖昧な報告書などは要注意です。

こうした不要な業務を整理することで、大幅な効率化につながります。

「ムダ・ムダ・ムリ」とは?
「ムダ」とは
  • 付加価値を生み出さない作業
  • 例:二重入力、探す時間
「ムラ」とは
  • 作業量や品質にばらつきがある状態
  • 例:特定の担当者だけが忙しい
「ムリ」とは
  • 人間や設備に過度な負担をかけている状態
  • 例:長時間労働、無理な納期
主なムダの種類
  • 手作業での転記作業
  • 過剰な承認フロー
  • 使われていない資料作成
  • 紙ベースの管理
  • 属人化された業務
ムダ・ムラ・ムリの「洗い出し」でやること・ポイント
  • やること:「なぜやっているのか」を問い直し、付加価値の低い作業を抽出する。
  • ポイント:ECRSなどを活用し、属人化や重複作業もチェックする。
ムダ・ムラ・ムリの「洗い出し」の具体的な方法
「なぜそれをやっているのか?」を問い直す
  • 担当者や上司に「この作業は誰が使うのか?何のために必要なのか?」と問いかけることで、無駄に気づくことができる
  • 作業の理由・目的が曖昧であれば、その業務が本当に必要かを再確認する
  • 書類や報告書など、使われていないアウトプットを特定して廃止・簡素化につなげる
ECRSなどの考え方を活用
  • 業務の無駄を整理する際のフレームワークとして有効
  • 特定の担当者しかできない作業(属人化した業務)を洗い出し、標準化やマニュアル化の必要性を確認する
  • 同じ情報を複数の部署が別々に管理・入力していないかを点検する
ムダ・ムリ・ムラの「洗い出し」の具体例:人材サービス企業
  • 週報の提出が形骸化していたため、廃止
  • その代わりに、月1回の成果レビューに統一し、社員の業務時間を年間80時間以上削減

なお、業務効率化そのものの解説につきましては、詳しくは以下の記事をご覧ください。

中小企業の管理職向け|業務効率化の全体像と無料相談で始める改善の第一歩

ステップ4. 改善策を「実行」する

業務改善の正しい進め方のステップ4は、改善策の「実行」です。

具体的な無駄や課題が特定できたら、具体的な改善策を立案し、実行に移します。

小さな改善でも、まずは行動に移すことが現場を変える大きな一歩になります。

改善策の「実行」でやること・ポイント
  • やること:小規模に試行して成果を確認し、マニュアル化や教育を行う。
  • ポイント:改善の意図を説明し、スモールスタートで現場の納得を得る。
改善策の「実行」の具体的な方法
スモールスタート
  • いきなり全社導入するのではなく、一部のチームや業務に絞って試してみる
関係者の巻き込みと説明責任
  • 改善に関わる人たちに「なぜやるのか」「どう良くなるのか」を丁寧に説明し、納得感を持ってもらう
マニュアルや手順書の整備
  • 新しいやり方が定着するように、ドキュメントを用意して教育も行う
改善策の「実行」の具体的な方法:営業部門
  • 見積作成をGoogleフォーム+スプレッドシートで半自動化
  • 1週間の試験運用を経て、全営業に展開
  • 1件あたりの作成時間を20分削減できた

ステップ5. 効果の「検証」をし、次につなげる方法と進め方

業務改善の正しい進め方のステップ5は、効果の「検証」をし、次につなげます

改善策は実行して終わりではありません。

「実際に効果があったのか?」を定量・定性の両面から検証し、次の改善につなげることが大切です。

これにより、業務改善を継続的に発展させることができます。

効果の「検証」でやること・ポイント
  • やること:定量データと現場の声で効果を測定し、再改善へつなげる。
  • ポイント:成果は共有し、改善サイクルを継続する姿勢を定着させる。
効果の「検証」の具体的な方法
定量データで効果を測る
  • 作業時間の短縮、ミス件数の減少、顧客対応のスピードなど、数値での変化をチェック
現場の声を集める
  • アンケートやミーティングで、改善後の実感や問題点をフィードバックしてもらう
必要に応じて再改善へ
  • 一度の改善で完璧になることはほぼない
  • 改善→運用→検証→再改善のサイクルを回していく
効果の「検証」をし、次につなげる具体例:営業部門
  • 見積自動化後、営業日報の分析で「残業時間が月15時間減少」「顧客対応件数が20%増加」などの結果が確認され、部門内で表彰事例として共有された

業務改善の方法を支えるフレームワーク|PDCA・ECRSなどの使い方

業務改善を進めるとき、「改善を続ける仕組みが分からない」「一度で終わってしまう」という課題に役立つのがフレームワークです。ここでは代表的な手法を紹介し、現場でどう使えるかを事例を交えて解説します。

こうしたフレームワークは、ともすれば堅苦しいものとして捉えられがちですが、先人の経験や学術研究による成果が凝縮されたものであり、事業規模を問わずに活用できるものが多いです。

ここでは代表的な5つを取り上げ、それぞれの方法の特徴と活用シーンを解説します。

業務改善を加速させるフレームワーク
  • フレームワーク1. PDCA|継続的改善の基本サイクル
  • フレームワーク2. BPMN|ムダをなくす4つの視点
  • フレームワーク3. ECRS|業務の流れを図で見える化する手法
  • フレームワーク4. KPT|改善活動の質を高める補助フレーム
  • フレームワーク5. QCD|業務改善の成果を左右する3つの評価指標
  • フレームワーク6. OODAループ|変化に即応するための判断・行動サイクル

フレームワーク1. PDCA|計画的に業務改善を進める方法

業務改善を加速させるフレームワークの1つ目は、PDCAです。

PDCAは、業務改善や品質管理において最も広く知られた継続的改善手法です。

「計画(Plan)→ 実行(Do)→ 評価(Check)→ 改善(Act)」の4つのフェーズを繰り返すことで、業務プロセスを継続的に最適化していきます。

特に、安定した定型的業務や日常の改善活動を継続するときに有効な方法として知られています。

PDCAの4つのフェーズ
Plan(計画)
  • 改善目標を設定し、その目標達成のための具体的な計画を立てる
  • 「何を」「いつまでに」「どのように」行うかを明確にする
Do(実行)
  • 計画に基づいて業務改善策を実行する
  • 計画通りに進んでいるか、どのような問題が発生したかなどを記録することが重要
Check(評価)
  • 実行した改善策が目標に対してどのような効果をもたらしたかを評価する
  • 計画と結果を比較し、成功要因や失敗要因を分析
Act(改善・処置)
  • 評価結果に基づいて、次のアクションを決定する
  • 成功した場合は標準化し、問題があった場合は改善策を見直して次の計画に繋げる

PDCAサイクルを回すことで、場当たり的な改善ではなく、データに基づいた持続的な業務改善が可能です。

PDCAの具体的な改善事例
  • 活用方法:製造業の小規模工場で、不良品率を下げるためにPDCAを導入。工程ごとに「計画(Plan)」を立て、テストラインで「実行(Do)」、結果を「検証(Check)」、改善点を「行動(Act)」に反映。
  • 結果:不良率が半年で15%から8%に減少。改善内容を定期的に文書化し、マニュアル改善を継続したことで、担当者が変わっても同じ品質を維持できるようになった。

フレームワーク2. BPMN|ムダをなくす4つの視点

業務改善を加速させるフレームワークの2つ目は、BPMNです。

BPMN(Business Process Model and Notation)は、業務プロセスを標準化された記号とルールで表現するための国際標準です。

複雑な業務の流れを視覚的に整理することで、関係者間の認識のズレをなくし、効率的な分析と改善を促進します。

業務プロセスを明確かつ一貫した形でモデル化し、関係者全員が理解できる状態にすることが目的です。

特に、部門横断の業務プロセスを見える化したいときに有効な方法です。

BPMNの特徴
  • フローオブジェクト、コネクティングオブジェクト、スイムレーンなど、様々な要素を組み合わせて業務プロセスを図示する
  • 特にスイムレーンは、業務の担当者や部署を明確に示し、責任範囲や引き継ぎポイントを分かりやすくする

BPMNを用いることで、業務の「見える化」の質が高まり、無駄な工程やボトルネックの発見に役立ちます。

BPMNの具体的な改善事例
  • 活用方法:物流会社で配送依頼の受付から納品までの流れをBPMNで図解。業務を可視化した結果、同じ情報を2度入力している工程や、承認に時間がかかっている箇所を発見。
  • 結果:入力システムの統合と電子稟議・ワークフローシステムの導入による承認フローの簡略化により、リードタイムが平均3日から1.5日に短縮。顧客からも「納期が早くなった」との評価が増加した。

フレームワーク3. ECRS|業務の流れを図で見える化する方法

業務改善を加速させるフレームワークの3つ目は、ECRS(読み方:イクルス)です。

ECRSは、業務プロセスから「ムダ」を徹底的に排除し、効率化を図るためのシンプルなフレームワークです。

現場での小さな改善から大規模なプロセス改革まで、幅広い業務に応用できる柔軟性を持っています。

特に、重複作業や属人化の解消に取り組むときに効果的とされています。

ECRSの4つのポイント
Eliminate(排除)
  • その作業自体が不要ではないか、本当に必要なのかを問い、思い切って廃止できないかを検討する
Combine(結合)
  • 複数の作業や工程を一つにまとめられないか、同時に行えないかを検討する
Rearrange(交換・再配置)
  • 作業の順序や担当者、場所を変えることで効率化できないかを検討する
Simplify(簡素化)
  • 作業自体をより簡単に行えるようにできないかを検討する
ECRSの具体的な改善事例
  • 活用方法:人材サービス企業の営業事務で紙の契約書作成業務をECRSで見直し。電子契約サービスを導入することで、「排除(不要な押印手続きの廃止)」「結合(入力と承認をワンフロー化)」「再配置(担当を専任化)」「簡素化(案件ごとに必要な項目のみを抽出して入力)」を実施。
  • 結果:1件あたり2時間かかっていた契約書作成が20分に短縮。属人化していた業務も標準化され、繁忙期でもスムーズに処理できるようになった。また、収入印紙が不要となり、印紙税の節税にもなった。

フレームワーク4. KPT|改善活動の質を高める補助フレーム

業務改善を加速させるフレームワークの4つ目は、KPTです。

KPTは、主にプロジェクトの振り返りやチーム改善に活用されるフレームワークです。

定期的なミーティングで「Keep(続けること)」「Problem(問題点)」「Try(次に試すこと)」を整理・共有することで、チーム全体の学習と成長を促進します。

特に、小規模チームで定期的に改善活動を行う際に有効とされる方法です。

KPTの3つのポイント
Keep(続けること)
  • 良かった点、今後も継続していきたいこと、成功した要因などを共有する
Problem(問題点)
  • 課題や問題点、改善が必要な点、うまくいかなかったことなどを洗い出す
Try(次に試すこと)
  • Problemで洗い出した問題点を解決するために、次に具体的に何を試すかを決定する(具体的な行動計画)

また、チームメンバーの主体性を引き出し、ポジティブな雰囲気で課題解決に取り組むことを後押しする点も特徴です。

特に、アジャイル開発やスクラム開発の現場で頻繁に利用されていて、改善活動をスムーズに進めることができます。

KPTの具体的な改善事例
  • 活用方法:ITベンチャーのカスタマーサポートチームで週次の振り返りにKPTを導入。「Keep(良かった点)」「Problem(課題)」「Try(次に試すこと)」を整理。
  • 結果:チャットボット導入を試した結果、問い合わせ初期対応時間が平均10分から1分に短縮。また、確度の高い見込み客に限って人間が対応することに成功。メンバーの負担も減り、定着率が改善した。

フレームワーク5. QCD|業務改善の成果を左右する3つの評価指標

業務改善を加速させるフレームワークの5つ目は、QCDです。

QCDは、製品やサービスの提供において重要な「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」の3つの要素を指します。

業務改善の目標設定や効果測定における基本指標として活用され、ビジネスの成功に直結するフレームワークです。

特に、改善施策が成果につながっているかを確認したいときに有効とされる方法です。

QCDの3つのポイント
Quality(品質)
  • 製品やサービスの品質、業務の正確性、顧客満足度など
Cost(コスト)
  • 製品やサービスにかかる費用、人件費、材料費、間接費など、あらゆるコスト
Delivery(納期)
  • 製品やサービスの提供スピード、リードタイム、納期遵守率など

業務改善は、これらQCDのいずれか、または複数を向上させることを目指して行われます。

例えば、業務プロセスの自動化は「Cost」と「Delivery」の改善に直結し、さらに「Quality」の安定にもつながります。

また、QCDは業務改善の成果を客観的に評価するためのKPI(重要業績評価指標)としても機能し、改善活動の効果を測定・検証する際に役立ちます。

QCDの具体的な改善事例
  • 活用方法:アパレル企業で新商品の企画から納品までをQCDで評価。「品質(不良率0.5%以内)」「コスト(原価率30%以下)」「納期(3か月以内)」を指標に設定。
  • 結果:従来6か月かかっていた商品企画が3か月で実現。売上総利益率も向上し、改善の効果を経営層が数値で把握できるようになった。

フレームワーク6. OODAループ|変化に即応するための判断・行動サイクル

業務改善を加速させるフレームワークの6つ目は、OODAループ(読み方:ウーダループ)です。

OODAループは、PDCAサイクルに対比される改善手法であり、迅速な判断と行動を重視、特に変化の激しい現場向きの方法です。

「Observe(観察)→Orient(状況判断)→Decide(意思決定)→Act(行動)」を繰り返し、PDCAよりも迅速な判断と行動を重視する改善サイクルです。

特に、急なトラブルや変化の激しい状況で、素早く対応が必要なときに有効とされる方法です。

OODAループの4つのフェーズ
Observe(観察)
  • 外部・内部環境の変化、現場の状況、顧客の反応、競合動向などを広く・リアルタイムに観察する段階
    • 事実ベースで情報を収集する
    • 日常的な「違和感」を拾う習慣を持つ
    • 現場の声やデータの変化に敏感になる
Orient(状況判断)
  • 観察した情報をもとに、自社の目的・価値観・過去の経験などを踏まえて、意味づけ・状況整理を行う
    • 主観に偏らず、複数視点から解釈する
    • 「何が本質か」「何が変わったか」を見極める
    • ここで判断軸を明確にすることが重要
Decide(意思決定)
  • 方向性や対応策を即座に決定するフェーズ。状況の変化に合わせて、最適解を選ぶ
    • 完璧を目指さず、実行可能性を重視
    • 迅速な判断でチャンスを逃さない
    • 「やらないこと」も明確にする
Act(行動)
  • 判断に基づいて素早く実行に移すフェーズ。実行後すぐに次の観察(Observe)へと移行する。
    • 小さくても確実にアクションを起こす
    • 現場の変化に即応できる体制を整える
    • 行動の結果をすぐにフィードバックへ反映する
OODAループの具体的な活用事例
  • 活用方法:飲食店で急な食材不足が発生した際にOODAを導入。「観察(仕入れ状況の即時確認)」「状況判断(代替メニューの検討)」「意思決定(当日の提供メニュー変更)」「行動(店舗告知と調理指示)」を迅速に実施。
  • 結果:欠品によるクレームが減少し、店舗スタッフの混乱も最小化。現場からは「判断が早くなり動きやすくなった」との声が上がった。

結局どの業務改善方法のフレームワークを使うべきか?特徴・オススメは?

ここまでで代表的な6つのフレームワークを紹介しました。

では、実際に現場で「どれを使えばよいのか?」と迷う方のために、それぞれの特徴とおすすめの場面を整理します。

フレームワークごとの特徴・オススメ
  • 安定した業務をコツコツ改善 → PDCA
  • 部門横断で全体像を共有したい → BPMN
  • ムダや重複を徹底的に削減したい → ECRS
  • チームで継続的に改善のタネを出したい → KPT
  • 成果を数値で把握し評価したい → QCD
  • 環境変化に即応したい → OODAループ

これらを参考に、課題となっている業務の改善方法として取り入れてみてはいかがでしょうか。

中小企業におすすめの業務改善ツール・サービス

最後に、中小企業におすすめの業務改善ツール・サービスをご紹介します。

特に中小企業が業務改善を進める際には、自力で仕組みを構築するよりも、既存のツールや外部サービスを活用したほうが効率的なケースが多くあります。

ここでは、比較的導入しやすく効果が大きい代表的な方法を紹介します。

中小企業におすすめの業務改善ツール・サービス
  • 方法1. アウトソーシングで業務を“任せて改善”
  • 方法2. AI(人工知能)の活用でミスと時間を減らす
  • 方法3. データ分析で課題を“見える化”する
  • 方法4. クラウドサービスの導入で業務効率をアップ
  • 方法5. クラウドによるITインフラの最適化で変化に強い組織へ

方法1. アウトソーシングで業務を“任せて改善”

中小企業におすすめの業務改善方法の1つ目は、アウトソーシングで業務を”任せて改善”する方法です。

【意味・定義】アウトソーシングとは?

アウトソーシングとは、自社で行っていた業務の一部または全部を外部の専門業者に委託することをいう。

アウトソーシングにより、専門家や外部事業者に一部業務を委託することで、属人化や人手不足を解消できます。

これにより、社内のリソースをコア業務に集中させると同時に、専門性の高い業務を効率的かつ高品質に処理できるようになります。

アウトソーシングのメリット
コア業務への集中
  • 定型業務や専門性の高い非コア業務を外部に任せることで、自社の強みである中核事業に経営資源を集中できる
コスト削減
  • 固定費(人件費など)を変動費化できるため、コスト構造を最適化できる
専門性の活用
  • 外部の専門知識やノウハウを活用することで、自社だけでは難しい
業務の安定化
  • 高品質な業務遂行が期待できる
  • 専門業者に委託することで、担当者の急な欠員などによる業務停滞リスクを回避可能
アウトソーシングの具体例

経理・給与計算業務

  • 毎月の経理処理や給与計算を専門の税理士事務所やアウトソーシング会社に委託することで、社内の経理担当者は、より戦略的な財務分析に時間を割けるようになる

カスタマーサポート

  • 問い合わせ対応の一部または全てを外部のコールセンターに委託して顧客対応の品質を維持しつつ、社内人員を営業や開発に集中させる

方法2. AI(人工知能)の活用でミスと時間を減らす

中小企業におすすめの業務改善方法の2つ目は、AI(人工機能)の活用でミスと時間を減らす方法です。

AI(人工知能)は、データ分析や意思決定の支援、自動応答など、さまざまな業務を代替・自動化することで、業務効率を大幅に向上させる可能性を持っています。

特に近年では、生成AI・自然言語処理・画像認識といった先端技術が、中小企業でも現実的に活用できる段階に入っています。

これにより、人的ミスの削減や作業時間の短縮といった効果が期待できます。

AI(人工知能)を活用するメリット
自動化と省力化
  • 人手による定型業務やデータ処理をAIが代替することで、人的ミスを削減し、大幅な時間短縮を実現する
高度な分析と予測
  • 大量のデータを高速で分析し、人間では見つけにくいパターンや傾向を発見
  • 経営判断や意思決定の精度を高める
顧客体験の向上
  • 24時間対応可能なチャットボットなどにより、顧客からの問い合わせに迅速かつパーソナライズされた対応が可能
AI(人工知能)活用の具体例
  • 請求書や契約書などの書類からAI-OCR(光学文字認識)でデータを自動抽出し、基幹システムに連携することで、手作業による入力ミスや時間をなくす
  • 顧客の購買履歴や行動データをAIが分析し、パーソナライズされた商品推薦や広告配信を自動化することで、効果的なマーケティング戦略を立案

方法3. データ分析で課題を“見える化”する

中小企業におすすめの業務改善方法の3つ目は、データ分析で課題を”見える化”する方法です。

業務におけるデータ分析は、現状の課題を客観的に特定し、さらに改善策の効果を定量的に評価するために欠かせないプロセスです。\

勘や経験に頼る意思決定に比べ、データに基づいた判断ははるかに正確かつ効果的であり、持続的な業務改善につながります。

具体的には、売上や在庫、作業時間などを数値化して可視化することで、改善の優先順位を決めやすくなります。

データ分析のメリット
課題の明確化 業務プロセスにおけるボトルネック、非効率な部分、ムダなどを数値で可視化し、具体的な改善ポイントを特定できる
効果測定と検証 改善策導入後の効果を定量的に測定し、目標達成度を客観的に評価できる
意思決定の精度向上 データに基づいた根拠ある判断が可能になり、勘や経験に頼らない合理的な経営判断を支援する
データ分析を活用した課題の”見える化”の具体例
  • CRMシステムに蓄積された顧客データや商談履歴を分析し、成約率の高い営業手法や顧客層を特定 > 営業戦略の改善に繋げる
  • 製造ラインの稼働データ、不良品発生率、作業時間などを分析し、生産効率を阻害する要因を特定 > 工程改善や設備投資の優先順位を決定する

方法4. クラウドサービスの導入で業務効率をアップ

中小企業におすすめの業務改善方法の4つ目は、クラウドサービスの導入で業務効率をアップする方法です。

【意味・定義】クラウドサービスとは?

クラウドサービスとは、インターネット経由で提供されるソフトウェアやインフラサービスをいう。

中小企業にとっては、従来のように高額なシステム投資を行わずとも、必要な機能を柔軟に利用できる点が大きな魅力です。

特に、勤怠管理、顧客管理(CRM)、在庫管理などは、どの企業でも発生する業務であるため、クラウドサービスの需要が多く、また、サービス間の競争が激しいため、中小企業でも低コストで導入可能なものも多いです。

クラウドサービス導入のメリット
低コストでの導入
  • 自社でサーバーやソフトウェアを購入・管理する必要がなく、初期費用を抑えられる
  • 月額利用料などのサブスクリプションモデルが主流
スケーラビリティ
  • 企業の成長や業務量の変化に合わせて、柔軟にリソースを増減できる
場所を選ばないアクセス
  • インターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、リモートワークや多拠点での業務連携が容易になる
常に最新の機能
  • サービス提供者によって常に機能がアップデートされるため、常に最新の環境を利用できる
クラウドサービスを活用した業務効率アップの具体例

クラウド会計ソフト

  • 簿記の知識がなくても簡単に帳簿付けや決算処理が行え、銀行口座やクレジットカードとの連携で自動仕訳も可能

クラウド型CRM/SFA

  • 顧客情報や営業進捗をクラウド上で一元管理し、チーム全体で共有
  • 営業活動の見える化と効率化を促進する

オンラインストレージ

  • ファイルの共有や共同編集を安全に行えるため、ペーパーレス化や情報共有の円滑化に繋がる

方法5. クラウドによるITインフラの最適化で変化に強い組織へ

中小企業におすすめの業務改善方法の5つ目は、クラウドによるITインフラの最適化で変化に強い組織を作る方法です。

方法④の「中小企業向けクラウドサービス」が特定の業務アプリケーションの利用を指すのに対し、こちらのクラウド導入は、企業のITインフラ全体をクラウド環境へ移行することを意味します。

これにより、ITコストの削減、運用負荷の軽減、セキュリティの強化、そしてビジネス環境の変化に迅速に対応できる俊敏性の向上を実現できます。

クラウドによるITインフラの最適化のメリット
運用・保守コストの削減
  • 自社でサーバー機器の購入、設置、保守、電力消費などを行う必要がなくなり、IT部門の運用負荷が大幅に軽減される
災害対策・セキュリティ強化
  • クラウドプロバイダーは堅牢なデータセンターと高度なセキュリティ対策を提供していて、自社で同レベルの環境を構築するよりも安全性が高まる
俊敏性と柔軟性
  • 新しいサービスやシステムを迅速に立ち上げたり、必要に応じてリソースを柔軟に拡張・縮小したりできるため、ビジネスの変化に素早く対応できる
グローバル展開の容易さ
  • 世界中に分散するデータセンターを活用し、地理的な制約なくサービスを展開できる
クラウドによるITインフラの最適化の具体例
  • 自社で運用していた物理サーバーをAWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドプラットフォームに移行することで、サーバー管理の手間をなくし、運用コストを削減
  • 重要なデータをクラウドストレージに自動バックアップすることで、災害時のデータ損失リスクを低減し、事業継続性を確保

業務改善ツール・サービスの比較まとめ

なお、ここで提案したツールやサービスには、それぞれに特徴があり、導入のしやすさや解決できる課題が異なります。

そこで「導入難易度」「解決する課題」「コスト感」「実際の事例」を一覧表に整理しました。

自社にとってどの方法が取り入れやすいか、優先順位を決めるときの参考にしてください。

業務改善の方法・ツール・サービス比較表
ツール・サービス 導入難易度 解決する課題 コスト・リソース感 事例
アウトソーシング ★★★☆☆
(契約・調整が必要)
人材不足・属人化の解消 一定の委託費用はかかるが、社内工数は削減 経理業務を委託した結果、残業が3割削減
AI・自動化ツール ★★☆☆☆
(設定や運用が必要)
定型作業の効率化・ミス削減 低コストツールも多く、効果は大きい 請求処理を自動化し、担当者工数を50%削減
データ分析 ★★★☆☆
(ある程度の習熟が必要)
課題の見える化・意思決定の精度向上 BIツール導入は中コストだが運用次第で高ROI 販売データを可視化し、在庫ロスが20%減少
クラウドサービス ★★★★★
(すぐ導入可能)
情報共有・リモート対応・効率化 月額制で低コスト、小規模でも導入しやすい 勤怠管理をクラウド化し、集計時間を80%短縮
ITインフラ最適化 ★★☆☆☆
(専門知識が必要な場合あり)
セキュリティ強化・基盤整備 初期投資が必要だが長期的に効果大 ネットワーク強化でシステム障害が激減

なお、上記の導入難易度やコスト・リソース感は、あくまで一般的な目安です。実際の導入にかかる負担や効果は、自社の業種・規模・現場の状況によって大きく変わります。

「この表を参考にしつつ、自社の場合はどうか」を検討する際には、専門家に相談して具体的に検討することをおすすめします。

業務改善は「内製」か「外部委託」か?メリット・デメリット比較

最後に、業務改善にあたって、社内で内製化する場合と外部の事業者に委託する場合のメリット・デメリットを提示します。

業務改善の内製化と外部委託のメリット・デメリット比較表
観点 内製化 外部委託
コスト 表面上の支出は少ないが、人件費や学習コストが比較的高い。 専門知識に対する費用は必要だが、短期間で成果に直結しやすい。
スピード 社内調整や試行錯誤で時間がかかることも多い。 豊富な知見により、初動が早く結果に結びつきやすい。
ノウハウの蓄積 自社にノウハウを残せる反面、業務改善のノウハウ自体に属人化の懸念もある。 支援後も運用を内製化しやすいよう設計されるケースが多い。
柔軟性 自社事情にあわせて柔軟に対応できる。 外部の視点で最適解を提案してくれるため、社内では気づけない盲点に気づける。
リソース確保 担当者が兼務になり、十分な時間が取れないことが多い。 専任チームが伴走するため、社内負荷を抑えられる。
リスク 試行錯誤が長引くことで成果が出ず、モチベーションが下がることもあり得る。 実績ある支援先なら、過去に成功した再現性のあるプロセスで着実に進められる。ただし、利益相反のために同業他社での成功事例を導入できない可能性がある。

以上のように、内製化にはメリットもありますが、時間・リソース・知見の壁にぶつかりやすいのも事実です。

特に「そもそも何が課題か分からない」「どこから着手すべきか悩んでいる」段階では、外部の知見を活用しながら、課題整理から始めるのが現実的なアプローチです。

まとめ

業務改善を進めるにあたっては、「どこまで社内で進めて、どこから外部の力を借りるか」の判断が非常に重要です。

内製の良さは、現場理解が深くスピード感を持って対応できる点ですが、専門知識や人材が不足していると限界があります。一方で外部委託の強みは、最新のノウハウやツールを短期間で取り込め、属人化やリソース不足を一気に解消できる点です

特に中小企業では、「外部の知見を取り入れることで短期間で成果を出す」ケースが増えています。自社だけで悩み続けるよりも、外部の専門家を活用したほうが、結果的に時間もコストも抑えられることが少なくありません。

本記事で紹介した5ステップ・フレームワーク・ツール・サービス・内製と外部委託の比較を参考に、まずは外部の視点を取り入れてみてください。

もし「最適な進め方が分からない」「社内だけで進めるのは不安」と感じる方は、ぜひ一度プロにご相談ください。

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